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”20” 城に潜む猫 ‐1
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side 健
ランプが、ゆらゆらと揺れてる
そうか、ランプにしちゃったら、大風や大雨じゃなかなか消えないね
しかも、あれは、消えない炎が核にあるランプ
もう、諦めてくれたって思ったのに
また、カオルくんは、やって来た
カオルくんは、辛抱強くて、僕が言うのもなんだけど、本当にかっこいい
傷だらけになっても、ちゃんと誰にも頼らないで立ち上がる
ほら、見てみて
僕の大風が冷たいお城の空気を巻き上げたから
風に氷の礫が混じってしまって、身体を切ってしまうのに
ちょっと顔を顰めただけで、前に踏み出そうとする
僕なら、怖気づいて、その場で泣きたくなっちゃって
誰か、誰かって助けを呼んでしまうと思う
そうして、僕が呼んだものだらけで
このお城は沢山のお部屋が用意された
でも、住む人が現れなかったのは
カオルくんが、住む人の分のことも、一手に担ってくれたからだ
佐倉家の下にある、僕の、僕だけしか知らないお城には
そんな、空き部屋がいっぱいある
そして、その中にある、カオルくんと一緒に出来たお部屋
僕は、今、そこに住んでいる
カオルくんは知らない、カオルくんが生まれた場所
僕が、いらなくて、閉じ込めてしまおうとしたもので、出来た空間
シーラちゃんも、すぐ先のお部屋の、
カオルくんの錠前と、僕の鍵が揃わなきゃ開かないドアの向こうで、すやすや眠ってる
シーラちゃんは、怖い子
あの子のお部屋には、名前のない強い男の子が一緒に住んでいる
シーラちゃんをお姫さまって呼んでて、シーラちゃんが泣き喚くと
出て来て、見境なく、暴力を振るうんだ
シーラちゃんが出ない以上は、彼は出てこないから
カオルくんが、頑丈な錠前を作って、鍵を僕にくれた
「でもね、健が、どうしても必要になったら、迷わず開けなくちゃいけない。
シーラだって出さなきゃいけない時があるし、彼だって出て来て貰わなきゃ困る時もある」
カオルくんは、僕に、厳しい顔で言った
僕は、そんなカオルくんに、
今は、自ら望んで、ここに閉じ込められてるんだ
ここにあるものは、僕を傷つけ続けるものばかりだけど
これは、小さな頃の僕が逃げた真実だから
この部屋をきちんと片づけてから、
僕は、僕が中学の時に籠った、本当の僕の部屋に行かなくちゃいけない
これは、僕の遅ればせながら、始めた、僕だけの孤独な闘い
お祖母ちゃん、ううん、静さんが、かな?
無理やり破れ目を塞いだ後を、ついこの間、みつけた
カオルくんの錠前が無事かを確かめに行ったシーラちゃんの部屋の前にも、
これと同じ縫い目をみつけたよ
そうか、静さんが、僕を守るために、外部から施してくれたんだ
強い強い糸で縫ってあるもの、彼女じゃなきゃ出来なかっただろう
ねえ、カオルくん
僕は、もう、守られてちゃダメなんだって、わかったから
だから、そんな、欲しくてたまらなくなるような
眩しくて強くて温かい、光の塊を持って
腰にきっちりと、優しく、でも、しっかりと巻かれている命綱をつけて
僕を探しに来ないで欲しい
カオルくん、望んでるくせに
誰よりも、望んでるくせに
だから、もう、いいんだよ、カオルくんが、報われたって、ね?
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