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”23” ネコが猫を被るかを判ずる王子 ‐3
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カオルの迫力に尻すぼみになった偽彼に、
阿川が、独りで帰れるから置いていけって言うと、すごすご引き下がり。
芝居の共演者にされていることも知らぬ仲間内の数人が、偽彼と共に、去って行き。
しゅんとした阿川を俺達のテーブルに誘い、阿川の分の追加オーダーをしてもいいかと俺に訊く。
カオルは、全然、健らしくなんかないのに、夢中で、健っぽく振舞ってるつもりらしい。
「私、飲んじゃおうかな~!ビール、生中下さ~い!」
「ふふふ。いっぱい食べて元気になって下さいね。この後、どうされる予定だったんですか?」
「ん~と、日帰り温泉に入って~、夕食どっかで食べて~、解散かな~」
「佐倉さん、温泉、いいところがありますか?あ、ここの牧場にもありますね」
「温泉だったら、家に来ればいいでしょ。タダだし、ゆっくり入れるよ。
で、新幹線の時間に合わせて送ってやれるし。カォ、・・・健が御飯何か作ってくれるなら一緒に」
「そうですね、じゃ、それでいいかも。阿川さんはいいですか?」
ほら~、慣れない気遣いなんかしてるから、箸、カオルの、止まっちゃってる。
ま、いっか。気に入ったなら、悪巧み抜きで、また近い内に来ればいいんだもんな。
常にデートは水入らず状態なんだし?いつもなら。
トントン拍子に事が運び、別荘に到着すれば
「出る時バタバタしたから、散らかってるかも!少し待ってて下さい。佐倉さん、鍵貸して!」
俺達を駐車場に置いて緩い坂の家までの小道を駆け上がる。
そうか、俺達の住まいを訪れたことのある大学の友人知人は、同郷で幼なじみ圭介のみだ。
健は、言葉に出しこそしなかったが、存外、テリトリー意識は強くて、マンションに清掃業者を入れてることも気に入らないんだ。
「仮住まいでも二人の愛の巣に乗り込む初の友人なのね、私は」
「その言い方。年寄りかよ」
「うわ、失礼。私、早生まれで、中舟生くんより350日も若いんだけど」
「……そ、うだったの?知らなかった」
「健くんには、毎年プレゼント図書カード貰うことにしてるからね。気付かなくて当然じゃない?
あ~カオル君なら、気にしそう」
事も無げな口調の阿川は続ける。
「別人ね、こうも違うと気味が悪いわ」
そんなこと、今までの健の皮を被ってるつもりなカオルへは、露にも見せぬ表情は、なんなんだ。
……女って、怖い。
◇◇◇
最後の汁椀を飲み干し、阿川は満足そうに溜め息。
「んあ~、幸せッ!喧嘩して正解だったわ~。健くん御馳走様~美味しかった~」
「お粗末様でした。ビール、もういいのですか?」
馬上のカオル並みな緊張感を家中に漲らせて、しかし、本人は自然体を装う。
テーブルの上に並んだ空缶を寄せ、全てが空で、新しく持って来ようと腰を上げかけたところだ。
「あ~、大丈夫。俺が今日飲む分なくなるし」
「あ、ご、ご免なさい。あ、どうしよう、まだ入ってたかな」
「んもう、無い時は、コンビニ寄って貰って、買い与えて帰すわよ。気、使い過ぎ」
阿川の言葉に余計、おたおたする。
お客様にそんなにしてもらうなんてって顔。
「阿川、そろそろ出るか?」
「ん~、もう?嫌だなぁ~このまま泊まりた~い」
「僕は構いませんけど、彼氏さん、待ちぼうけしてしまいますよ?」
ほら、最終ポイントチェックも、ね?
健じゃあり得ない反応だろ?
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