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”25” ネコを招待する王子 ‐3
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1週間、特にやることもなく、家にいるのはちょっとどころか、かなり苦痛だろう。
ましてや、カオルにとっては、他人の家だ。
傷つけるかもしれないけれど、一番初めに、時間つぶしに頼もうと思っていること。
部屋の片づけだ。
俺と健で暮らしてた現状に、全部戻してしまおうと思ってる。
記憶を失ってると思って、そんな健を、伴侶としてではなく。
純粋に、今は、行きがかり上兄弟で、元は仲のいい友人同士な、シェアハウスを装うつもりで
片付けた諸々を、俺が留守の間、目算の場所に戻して置いてもらおうって。
カオルは、もう、健が俺と結婚してたって知ってるんだし、健が戻ることを目標にしてるって
俺達は、互いに言い合って来たんだ、これまで。だから、断ることが出来ないだろう。
もちろん、嫌がったら、強制するつもりはないけどね。
なんか、今は、カオルなんだって、俺達、どっちとも、線引かないと、怖い。
出がけに、助手席が嫌だなんてごねたのは、
意を決してしてくれたカオルの俺への想いの告白に、返事をしてない俺への当て擦り。
あ~もしかして、いや、ぜったいそうか。
日々のこのしょうもない悪戯も、あの日の翌日からだったんだから、嫌がらせなのかも。
「どうしたいんだよ・・・・・・カオルの本心はさ」
高速に乗る前に、那須の地元で評判のイタリアンレストランで、順番待ちして食べた。
健なら諦めちゃうような場所で、美味し~いって笑顔で飯が食えるカオルが、
満腹も手伝って、すっかり熟睡してるってわかってるから、呟く。
猫とネコの間で葛藤し続けるのが、なんか、苦しくてさ、つい。
眠ってる顔は、健なんだもんな。
さすがに、これは変わんないよね、瞳閉じちゃってる状態なんだしさ。
あ~、やばい。すげぇ、キスしたい。
このもやもやを何とか鎮めんが為に、滅多に寄らない、小さいPAに寄って、
二人っきりの移動できる密室から少し出ようとして。
「うわ、あっつい!」って、外気が、ぐったりするほど暑くて、つい叫ぶ。
ぴくん!っびっくりして、目覚めたカオル。
何事か?って感じだったのが、寝起きの悪さが手伝ってか。
ぼーっとした目の焦点の合わなさが、また、イっちゃった後の健を連想して。
「・・・・・・着いた?」
「ワケないっしょ。ごめん起こした。あ、丁度いいか。トイレ行っておいで。ここ空いてるし」
「・・・・・・ん、ひとり、嫌。途中まで一緒に来て?」
あれ?敬語じゃない。しかも、デレモード?
ちょっと貴重過ぎて、ご要望通り、甘やかしてみる。
よろよろする身体を支えてやりながら、前まで送って。
「そこの売店に、終わったら集合ね?」
「・・・ん。ね、喉渇いた」
「なんか、買っとくね。行っておいで」
ぽやーんとしてて、カオルらしくなくて。なんか、いつもの健っぽい。
え?健なの?もしかして?
自販機前で、めっちゃドキドキして、買った飲み物手にして待ってた。
「佐倉さんは、行かないんですか?」
「……あ、うん。行くよ。先に車に戻る?」
「いえ、待ってます。すみません寝ちゃってて。顔も洗って来たので、もう、大丈夫です。運転してもらってるのに、ほんと、すみませんでした」
がっくり。
全然、いつものカオルに戻ってるし。
◇◇◇◇◇
真っ白に洗い上げた最後の1枚になったシーツを、景気よく振って、
洗濯竿に背伸びしてひっかけるカオルを、ぼんやりエアコンの効いた室内で眺めてる。
俺が頬杖をついてるテーブルには、タブレットが放り投げられてる。
その周囲には、プリントアウトされた、色んなホームページ。
どちらとも、表記されているものは、「東京の観光案内」系の物。
昨夜は、居住まいが悪そうに、キングサイズのベッドに一人で横たわり。
よく眠れなかったようで、今朝、起こしに行って、やっと、不機嫌そうに起きて。
安眠出来ないわけないんだよなあ。
健が嫌がるから、ベッドのスプリングも軋み難いのにしてるし、
安物じゃないから、マットも身体のあたりが良い低反発のだし。
朝飯を食いながら、なんで、何が悪くて安眠できなかったのかと訊けば。
「・・・・・・洗濯は、ちゃんとしてましたか?枕カバーとかシーツとか?」
「そんなには頻繁にしてなかったな。大して、汚れなかったしさ」
「しっ、信じられない。汚れますよ。人は一晩寝てるだけでコップ1杯から1.5杯の汗を掻くんです。
いつから?いつから洗ってないんですかっ?」
え、じゃあ、洗えばいいんでしょって言ったら。凄い勢いで残りの食い物を詰め込んで。
寝具だけとは言わず、家中の布カバー類を引っぺがし、溌剌と洗濯をしまくり出した。
もちろん、俺の部屋のも例外じゃなく、健が居なくなって、
そっちで寝てる比率の方が高かったから、布製品の悉くを剥された。
いっそ、カーテンまで洗いたいって言ったもん。
洗濯機に放り込めるものは放り込み、手洗い表示のは浴槽に入れ、どうするんだと思ったら、
健が恥ずかしがって絶対に穿かなかったデニムのホットパンツとラフなTシャツ姿で現れ。
体毛薄くて、女の子の生足よりもある意味、殺人兵器並みな威力のある裸足の細い足で
踏み洗いも含む、手洗いを、がっしがっしと、始めてしまった。
稼働中の洗濯機で脱水もしたいから、そっち待ちの間、
部屋の掃除をしたいので掃除機の場所は?って訊く、カオルをテーブルに呼ぶ。
「掃除は、週2で清掃業者が来てるし、確か金曜日に来てるんで、その辺はいいよ。
それよりさ、これ見てよ。せっかく天気もいいしさ~」
東京お出かけスポット特集の印刷物と、タブレットを持って来て見せた。
「え?何を見なきゃいけないんですか?・・・・・・佐倉さん、あのですね?」
え?なんで、呆れてるんだ?
「明日から試験なんでしょう?だから、僕はここに連れてこられたんですよね、嫌だって言ったのに。
天気がいいから、出かけようなんて言うつもりですか?もしかして」
「え? だ、ダメかな。夏の特別展示とかあるとこ多いしさ」
こめかみを押さえて、ため息をつかれた。
「僕、今日は一日、洗濯と掃除をします。ここの清掃業者さん、替えた方がいいですよ。
佐倉さんが留守なのをいいことに、見えるところしかしてないと思います。
なんで、佐倉さんは、本業に勤しんで下さい!」
「本業?」
「お勉強に決まってるでしょう!早く!じゃないと、カーテン洗いますよっ」
・・・・・・すごい剣幕で怒られた。
で、魅惑的な後ろ姿で働くカオルをぼんやり見てる、今に至る訳だ。
ただ、1箇所、カオルが戸惑って、開けられない扉があるんだけどね。
そこは、健の部屋だよって。
次々、家中の布製品をかき集めてる背中に、その部屋のドアノブを掴んだ時に教えたら、
とりあえず、ここまでで一区切りにするって、入ろうともしなかった。
晴天に、はためくリネン類を、ベランダの健と俺の大事にしてるベンチに座って
カオルは満足そうに眺めた後で。
「佐倉さん、あの、クリーニング屋さんに行きたいんですけど、連れてってくれますか?」
家で洗えなかったものを纏めて、ビニールのゴミ袋に詰めて持って来た。
「い、いいけどさ。服、とりあえず着替えようか。俺、健の生足晒したくないや」
「・・・・・・あ。 えっと。・・・す、すみません」
しかも、それ、レディースもんなんだよね。
可愛いし、似合ってるから俺だけが見るなら最高だけど。
よく、クローゼットから見つけ出したもんだよって、かなり驚愕したしね。
絶対、奥の方に未使用の梱包のまま入ってたと思うんだよね。
ハロウィンの仮装に使う、オレンジの南瓜っぽい色のホットパンツなんだからさ。
「いや、悪いとか、似合ってないとかじゃなくてさ。
もし嫌じゃないなら、一緒に入ってたのも後で着てみてくれる気ないかな?」
猫耳つきのパーカートレーナーが売ってた女子の可愛い系な服屋さんにあった
マネキンの着てたハロウィンコーデをまるっと買って来ちゃったやつ。
黒のドレスシャツにオレンジのアスコットタイと
黒地にサイドのところジャックランタンの模様が縦に並んで入ったオーバーニーと
フェイクファーの獣耳のカチューシャと手袋と
赤黒リバーシブルなフード付きミニローブが一緒に入ってたと思うんだよね。
絶対に着ません!って健に、すっごく怒られたんだよね、それ。
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