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”25” ネコを招待する王子 ‐4
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首を傾げて、考えてるカオル。
ポンと手を打って、あ~!って顔をする。
「ハロウィンの衣装だったんだ。なるほど」
「気付いてなかったの?」
「はい。クローゼットの中、あんまり普通の服なくって。汚しても平気そうなので丈が短いのってだけで探したんですよ。Tシャツも新品ですよね?」
それもレディースで、プリントがピンクの実寸大位な猫のシルエットで体に巻き付いてるみたいな感じに肩から胴回りに大きく入ってるところが斬新で、猫がじゃれついてるって様子っぽい。
大きめですよ~って同じ店の店員が勧めてるから、俺がインナーに着たくて衝動買いし。
開けてみたら、レディースの大きめだった。つまり俺にじゃなく、いつも買ってく、"カノジョ"にお勧めのつもりだったんだ。
健に「この猫が健のイメージだったから買ったら着れないんであげる」って言ったら、「色違い桔乃ちゃん着てた、また女の子のでしょ」ってバレて、しまいこんでたヤツ。
「あ~ごめん。クローゼットって健の普段着、殆ど入ってなかった。洋服はだいたいが健の部屋のクローゼットにあるんだった」
「どうりで。スーツとか和服のはあるんですけど、後、下着もかな。……すごいのとかもあります…ね」
昨晩、寝室に二人で居ると、妙な雰囲気になるんでライトの点け方とかだけ説明して、「着替えはクローゼットにあるから好きなの着て」って言い捨てて出てしまった。
朝食前、やたらカチッとした服装だなって思ったのは、半袖ワイシャツにスラックスだったからだ。
しかも、あのエロ下着コレクションを見てしまったんだね、カオル。
健に、もう少しエッチに積極性を持ってもらいたくて。セクシーな下着を時々、着用してもらってた。
「見ちゃったんだ……ね」
「えっと……すみません」
「オモチャとかも、見たよね?」
赤くなって、こくんと頷かれた。
滅多に使ってないし、初歩的なのしかないんだが。
健が、羽瑠に勝手に引っ越し荷物へ入れられたやつらしい。昨年末の、お仕置きエッチに使って以来死蔵品。
「着替えて来ますね」
「あ、ちょっと待って。俺、取ってくるよ」
また妙な空気になったので、カオルがリビングから逃げようとするのを押し留める。
俺に、済まなそうにして俯いた。
「上はそのままでいいかな?」
「あ、はい。じゃあ、僕は冷蔵庫片付けます」
「うわ、そんないっぺんにやらなくていいよ!」
「ダメです!冷凍焼けしてるのとか、消費期限切れのとか処分しないと。食べれるのは滞在期間中に使っちゃって……」
え~い、このっ、働き者めがっ!
健の部屋から、組み合わせて着れそうなのを幾つか持って来る間に、ゴミ袋を手に冷蔵庫を覗くカオルを見て、やれやれと溜息を吐いた。
新井クリーニング店の前で、アライグマのキッチュなイラスト看板に笑いを堪えるカオルをその場に待機させ、独り中に行き、ゴミ袋入りの洗濯物を差し出せば「王子様は季節外れの大掃除でもしたのかい?」と店主のオジサンに驚かれ。
商店街のオジサン軍団の御多分に漏れず密かな健ファンの彼は、中に入らないカオルを訝しむ。
俺が独りで住んでた頃より格段に利用頻度が落ちて、初めは痛し痒しだったのが、時々来てくれ、ハンガー回収も協力的で、癒し系笑顔で仕上がりを誉められたりして以降、家にはかなり割引チケットが貯まってる。
「健ちゃんの病気はどうなんだい?」
「お陰様で、皆さんを思い出せはしないですが、普通の生活は送れるようになりました」
「かみさんもさ、心配してんだ。良かったら顔見せてくんないかねぇ~」
「引き取りに来る日まで、説得してみます」
今日は商店街外れのクリーニング店のみで、ドラッグストアに寄る程度で帰るつもり。
だけども、新井さんから情報が巡って、商店街の共通認識になるんだろうな、明日中には。
俺が夏の間、那須にいることも、いつの間にか皆が知ってたし、それは、健が療養の為に無期限でそこに居を移してるからなんだって解ってた。
健の刺傷事件のことだって、大学側の規制でメディア等の情報漏洩を防いだ筈だが、翌日には信太郎から「健ちゃんばっかり、なんでこんな酷い目にあわされるんだ!」って、悲憤の思いが犇々と伝わるLINEが来てた。
預けっぱなしだったクリーニング済み衣類入りの大袋を提げて戻れば、カオルは斜向かいの和菓子屋のお婆さんに誘われて、店の前の縁台に並んで座り冷やし甘酒なんかをご馳走になってた。
「王子も飲んで行きなよ~。健ちゃんはお代わりしなさい。水羊羹、前は食べれたのに残念ねぇ」
「佐倉さんって商店街の渾名、王子なんですか?」
「誰かが呼び出したんだけど、ぴったりデショ」
お婆さんと健のふりしてるカオルが、俺を見てクスクス笑ってる。
「確か学校でも呼ばれてたみたいよ。そうそ、健ちゃん。王子はさァ、モデルの雑誌に出たんだよ。見たいかい?」
「え~!是非、見たいです!」
「お婆さん勘弁して。ほら帰るよ?あのお代は?」
無理矢理、カオルを引き立てて。慌てる俺に、お婆さんはサービスだよって大笑い。
バレなくて良いこともバレる。
この商店街の特性なんだよな~
ドラッグストアからの帰り道、見せて見せてとカオルに散々騒ぎ立てられた。
健は大事にしまいこんでた、1週間だけのモデルバイトの結果、超有名誌2冊と紳士服カタログ1冊に俺の恥ずかしい写真が載ってるヤツ。去年の秋は、そのせいで、ひと騒ぎあったなぁ。
「多分、健の部屋のどこかにはあるよ?俺の前で見ないなら、見てもいいけど。笑っちゃうかも」
「どんな経緯だったんだろう。でも、佐倉さんならモデルさん余裕でやれそうですね」
実は芙柚絡みなんだけどね。多くは語らないでおくよ。
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