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”26” 城に潜む猫 ‐6
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side 健
躊躇いのない縫い上がりの金色の繭
「静さん」が閉じて封じ込め、僕も、永遠に開かないでおこうと決めた部屋
忘れてしまおうと、決めたあの1か月と数日の記憶
真っ暗で毒々しい臭気を放つ、常人には耐えられない怨みの部屋
でも、ここを僕が出れば、外に溢れ出してしまうから、殆ど見張りに来ていなくてはならなくて
だから、僕は、中学から先の未来を全部、カオルくんに渡してしまうつもりでいた
誰にも話したくない、話すことを許せる筈もない、
もしかしたら、僕の本質が眠っているのかもしれない部屋
金色の繭の元は、「静さん」の金の長い糸
これを何十、何百、何千、もしかしたら何万本の糸を重ねて重ねて覆わなければ、しまい込むことが出来なかった
だから、入口を開けるのにも「静さん」のお針の箱から、握り鋏を持って来なきゃいけなくて
先に、「静さん」の部屋を片付けに行ったんだ
中の部屋に眠るのは、見るのも聞くのも、悍ましい僕だ
僕の中の、カオルくんにも、「静さん」にも見せてはいけないもの
あはは、シーラちゃんは、こんな僕に近いから、彼女には見せれるかもね
現実の世界で、お祖母ちゃんとお父さん
そして、誰よりも大切な、爽くん
その人達になんて、絶対に見せられやしないんだ
入口と目算した場所の糸に、1本、鋏を入れる
僕の指で、犬歯で、切ろうとしてもびくともしなかった糸が、あっけなくポロリと切れて落ちる
ざくざくと切り進めれば、おどろおどろしい、血みどろの手首が取っ手代わりについているドアがある
ドア自体が血塗られて腐った肉片が貼り付いた、醜悪な真っ黒く重たく固い一枚板で出来ている
この手を取らなければ、ドアは開かないのか
作って閉じこもる時には、窓や壁の隙間から出入りが出来て、このドアが必要なかったのに
繭にくるまれているから、切った糸で出て来たここからしか入れない
憎しみと怨みの感情が、僕の中からと
この手の元の持ち主から湧き上がって周囲に、汚れた臭気をまき散らす
この人の手は、僕の心を殺し
僕は、この手の人を殺した
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