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”26” 城に潜む猫 ‐7
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僕は、中学一年生の春を迎えていた
一生懸命勉強して、カオルくんに助けて貰わずに受けて合格した
最高学府にだって、毎年沢山の合格者を輩出してる名門中の名門校に
晴れて通学することになったんだ
お医者さんになる夢を、ここで沢山学んで、いい大学の医学部に入って
僕は絶対に叶えてみせるんだって、思って、心に誓ってた
ピアニストは、正直、無理じゃないかって思ってた
あの世界は、才能と努力が物を言うけど
努力が、才能を補いこそすれ、
才能のない物の努力を、無意味にする世界だと思った
僕には、お母さん譲りの才能があるんだって、お父さんは言うけど
きっと、お母さん程度の才能は、この世に結構な数で存在している
ワイル先生のシーラちゃんは、凄かった
でも、ワイル先生の子じゃなきゃ、あんなに持て囃されたりはしないだろう
才能と努力と、持って生まれた「弾くものとしての環境」が物を言う世界
僕にはそんな世界を渡り歩く程の強かさが無いと、どこかでわかっていた
でも、医師は、違う
必要なものは才能よりも、努力であり、絶え間ぬ探究心であり
未来への挑戦を怯むことなく、進み続ける勇気があればいいんだ
得手不得手は、学び行くうちに、得手で、且つ、特性の方を選んで行けて
持って生まれたモノなんかに、左右されない意思があれば、いつか必ず成れる仕事だと思った
身体が弱くて入退院を繰り返す幼い僕は、お医者さんって魔法使いなんだろうなって思ってて
そしたら、その頃の僕を担当してた、お爺ちゃんの先生が、言った
「違うよ、健くん。僕達は永遠に終わらない命の宿題を受け継ぐ仕事をしてるだけだよ。
その仕事の積み重ねが、今の医療で、今の積み重ねが、明日の医療に繋がる。
沢山の医者が、その時その時、精一杯の仕事をしてるんだ。ハハハ、ちょっと言葉が健くんには難しかったかな」って
僕は、宇宙の話を聞いているみたいに思ったんだ
大好きな星空の話 星空の果てはなんだろう、どんななんだろう
今、生きてる人は辿り着けない気の遠くなるほどの遠くまでを計算したり考えたりで導き出す人がいて
答えは、本当にこれって言えるものが無いんだって
「人の身体には、果ての無い、謎がまだまだたくさんあるんだよ」って先生は笑った
ああ、僕は、そんなことを、ずっと学んで、探して行きたいなって思ったんだ
でも、その頃の僕はこれを説明することが出来なくて、カオルくんに話したら
「死んじゃったお母さんみたいな人を助けられるようなお医者さん」って言えばいいんじゃないって
さすがだなって思った、カオルくんはやっぱりお母さんの名前を貰ってるだけあるねって感心した
そんなお医者さんになる為の、第一ステップ
お勉強が出来て、なるべく、いい医学部に入ること
この中学で、僕は一生懸命、頑張る
そして、お父さんとお母さんの為に、ピアノも出来るだけ頑張る
そして・・・・・・出来たら、出来たならでいい
親友って呼べる大切な・・・・・・お友達が欲しい
男でも女でも年も身分も何にも関係ない
この人ならば、僕が全てを話せるんだって、カオルくんのように当たり前に僕を知ってるんじゃなくて
初めから、この人は誰だろう、どんな人だろうって、想像してワクワクするような、そんなお友達
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