アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”27” ネコと王子の休息 ‐2
-
簡素な食事をベッドに運んでやり、共に食べ、下げて片付けて。
カオルは、うつらうつらしながら、俺が眠れるようになって、ベッドに戻るのを待っててくれてて。
「お疲れ様でした。今日は、お勉強は?」
「大丈夫。楽勝だし、赤点じゃなきゃいいだけだもん。もう、寝ようか?電気消す?」
ふるふる、首を振って、カオルは、半分、眠りの世界の住人なのか、溶けそうに柔らかい笑みを浮かべる。
そんな顔もするんだ、あ、健も、だったね。いつもこんな顔して俺にお休みを言うんだった。
「まだ、話がしたい、れす。さくら、さっ、れむ、い?」
「ほーれ、舌上手く回ってないよ。意地張らないで寝なさいって」
「やらっ、話すんれす。お水……」
「はいはい、待っててね」
酔っ払いみたいな呂律の悪さなのに、なんか話がしたいらしく、水を持ってってあげ、ペットボトルを手渡せばじいっと俺を見てる。
「もしかして、飲ませて欲しいの?口でするけど?」
「し、してみればいいじゃないですか。……嫌ならいいですけど」
強請っておきながら、緊張して眠気が覚めて、口調、はっきりしちゃってるし。
そういうのは大歓迎なので、お望み通りしてあげましょうね、カオルくん。
今宵はしっかりデレモードなのかな。ま、することした後で、ツンになられてもちょっと寂しい。
「もっと?飲みたい?」
「……も、いい、です。僕もしたい」
「宜しく~、初めてだから優しくしてね?」
「健はしてくれなかったんですか?」
「する訳ないでしょ、いつまでたっても、初心な奥さんなんだから」
口の中で、「僕もしたことはないですから…」って呟いて、頬を染めて返してくれた。
せっかくだから、俺の上に、身体を預けて欲しくなり、うつ伏せの腕を引き胸に載せた。
「抱っこ、して、寝て欲しいんだけど、嫌?」
「こうですか?」
俺の首元にさっきの風呂の時みたいにする。
「あ~これだと、またエッチがシたくなっちゃうんで、この辺りかな」
いつもの胸の位置に頭を乗せてる、健の大好きな位置までナビしてみた。
「あ、確かに、落ち着くかも。話し易くなる。心臓の音も聞こえて気持ちいいですね」
さらさらと手櫛で柔らかい猫っ毛を掬って放して、触感と温度の心地よさにうっとりしてる。
あ~もう、こういう事するの、半年近くしてなかったんだなって、充実感が胸を温める。
遠慮がちに頬を乗せてるだけのカオルは、動いちゃくれないけど
健は、甘えるみたいにすりすりしてくれてたんだよね、こういう時。
「眠りたくないの?もしかして」
「どうして、そう思うんですか?」
「ん~何となくかな。俺もまだ、眠りたくない気がしてて。あ、またエッチさせてってんじゃないからね?」
くすくす、鈴を転がすみたいにカオルが笑う。
「わかってます、無理だし」
「ごめん。あのさ……後悔してないなら、また別の機会に、シてくれるのかな?」
「佐倉さんが、僕を望んでくれるなら、応えたいと思っています……ではいけませんか」
ひとりエッチしてたの、突っ込んだら、ダメだよな。
傷つけちゃうかもしれないよ、な。
「今日は、僕が、欲しくなっちゃってて。僕がその……シてたの、わかりましたよね」
自分から、告白してくれるとは思わなかった。あ、そうか、これを話したくて、眠れないって思ってた?
「俺も、健のこと想って頻繁にオナニーしてるもん。普通でしょ。……ちょっと驚いたけど」
「健は、しなかったですよね。こんなはしたないこと」
「一度だけ、事後の健に遭遇したことはあったよ。ちょっと喧嘩っぽくなってさ。珍しく少しだけ積極的だったな~。いっつも、セックスは基本、受け身なんだよね、健って。でも俺の知らない所で、少しはしてたのかな、一緒に暮らし始めてまだ1年程度だったからね。付き合いは高2からだからもう5年になるのに」
「ずいぶん、長く付き合ってるんですね。出会いとかって、教えてくれます?」
俺達は、主に健と俺とのことを話す奇妙なピロートークに明け暮れ、いつの間にか、どちらからともなく眠りに落ちてた。
先に落ちたのはカオルって、俺は思ったけど。
カオルは、嫌じゃなかったんだろうか、こんな甘い語り合いは。って少し気がかりに眠ったのだった。
◇◇◇◇◇
一面の蒼。空ではなく、草でもない。
文字通り、青色の、蒼海を模したガラス水槽に囲まれた空間だ。
カオルにどこに行きたいかと、いくら聞いても埒が明かず、結局、俺が行きたいところに決めた。
昨日のダメージはどうかと問えば、何日もこんなことで寝込んでいられないでしょって笑った。
土曜の朝早くに出かけて、目的地を見て、遊んで。近所のホテルに1泊して、
翌日は、元気なら、横浜中華街辺りを冷やかして、午後から丹羽家に表敬訪問。
週末の予定は決まり、木曜の荒天が嘘のような、金曜午後からすっきりと青空に回復した天候は
今日のお出かけに何の支障もなく。朝から残暑が厳しそうな夏のありきたりな日。
俺が行きたかった場所は、八景島シーパラダイスって所。
新江ノ島水族館と迷ったけど、こっちにしてみた。
水族館デートってのを、一度、健としたかったんだ。
地元の、地元なりにそこそこ頑張った規模の水族館も近隣の市にあるんだが、
そこに誘ってみて、健は電車で出かけることで既に限界で、駅から引き返した。
しばらく落ち込んで、佐倉家に帰ったら、我慢できなくなって、べそべそ泣いてしまって、
却って健のことを考えないでプランを組んで、可哀想なことをしたなって、反省した。
車を持ってなかった俺は、東京に来たら、必ずどこかの水族館に連れて行くと密かに心に誓ってたんだ。
大学1年、2年は色々バタバタしてたのと、やっぱり人混み克服がいまひとつな健を
どこもやっぱり、結構混んでて、そこへ連れ出すのは自殺行為かなって、行こうって告げずに諦めてた。
カオルは茫然と大水槽の前に立ち尽くす。
水族館自体は初めてってわけじゃないんだそうだが、一度見に来たのが、あまりに幼い頃で、
静さんに連れられ、どこに何を見に行ったかも覚えていないらしい。
「しかも、健と代わる代わる出て、お祖母ちゃんに気付かれないようにするのを
ついつい、健が興奮しちゃうから、冷や冷やしながらで。
こんなに綺麗な場所だって知らなかった……」
俺は、けっこう田舎の近県の水族館なんかも行ってって、好きで、詳しい方。
一度、ここにも来たかったんだ。で、来るなら絶対に、健とって決めてたんだよね。
微妙に健じゃないって気もしないでもないけど。カオルだって、さ。健だもん。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
171 / 337