アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”27” ネコと王子の休息 ‐5
-
◇◇◇◇◇
腹立たしい程、仲良くなってんじゃん。
って、本日のシフトが日勤の水瀬にニヤつかれ見送られて以降、カオルは丹羽家に着くまでの道々、物思いに沈んでて、信号待ちまで我慢し俺はキスを頬にする。
「なっ、何?ビックリしますよ!何ですか?」
「普通に話しかけても聞いてくれなさそうなのと、ヤキモチかな。水瀬と楽しそうに話してたから」
「あ、それなんですが……僕、きちんと健になれてなかったのかなって、自信がなくて。やり過ぎました?」
「ふ~ん。それで黙っちゃってたんだ。気にしないで、あのオッサンは詳しいことは教えてないけど、勘づいてるからさ。健のちょっと普通じゃない事情を、やんわり把握して、俺達を構ってんの」
釈然としない様子なカオルに、尚も言葉を重ねる。
「はっきりするまで、再会を避けるつもりだったんだけど夏休み最終日の週末を俺はなめててさ。ここまでホテルが取れないとは思わなかった。最悪ラブホかなって。でもさ、カオルくんラブホは抵抗あるでしょ?入ったことないよね」
「あ、あるわけないじゃないですかっ!普通の中学生が来る場所じゃない」
「え、そうなの?俺は来てたけどね、ラブホ結構な頻度で、中学の頃。あ、もちろん男とだけどね」
うわ~そのムカデとかゲジゲジ見るみたいな目は止めてくれないかな。
「シーパラ見てる間に、取れる?って連絡しつつ頼んでおいたら、なんとか一部屋キャンセル出たからって取ってくれたんだよね、あのオッサン。取れなきゃ、ちょっと時間かかるけど、家に帰ればいいかなって思ってた。丹羽家はホテルなんかに泊まらないで来いって言ってたんだけど。あそこには滞在時間、短時間で済ませたいかなって」
丹羽家って、呟いて、また、カオルは黙ってしまった。
「ね、カオルくん。楽に構えてよ。いい?君は、現在の記憶を失ってる、中学校の頃の記憶がある健であればいいんだよ。だから、必要以上に演じることはないんだ。便宜上、丹羽家では君を健って呼ぶけど、中身はカオルくんのままでいいんだよ。ただ、ちょっとだけ健っぽくしてくれればいいだけ。俺にバレるまで出来てたじゃないの、あれでいいんだって。丹羽さんも羽瑠もその姿しか見てないし、夏さんと吾樹と来たら、あれも見てない訳だからさ」
「あまり……話さないようにしてもいいですか?佐倉さんに迷惑をおかけしてしまうのは気が引けますが。
僕の家族の事なのに、すみません」
よほど、自信がないみたいだ。俺が思うに、あの家族で注意するのは羽瑠だけだ。あいつは勘が鋭い。
圭介と付き合ってるから、圭介には詳しく話してないが、夏に健に関して何か大変なことをするために、大童だってことは知ってるんだ。
実際、感づいても、態度には出さないだろう。後で、探りを入れてくるだろうが。
今の健が、健の中に居る別の人格のカオルで、互いの担当時間の記憶、知らないだけだなんてのが、すぐに想像つくとは思えない。
俺だから、気がついたんだ。これは自負してる。他の誰でも気付けることじゃない。
「うん、任せて。カオルくんはさ、俺がうっかりカオルくんって話しかけないかどうかだけ気にしてなよ」
「その間違いは致命的ですね。気をつけて下さいね」
俺が砕けて言えば、カオルは柔らかく笑った。
「お土産、ホテルのお菓子で大丈夫かな」
「僕、昨日少し買ってありますから。一緒に渡せば嵩になりますよ。吾樹さんって可愛いの意外と好きなんですよ。ディズニーランドでもけっこう大人買いしてたんです。パッケージの可愛いお菓子とか」
「なんか、意外だな、羽瑠向けに買ってたんじゃないんだ」
「羽瑠さんも好きですけど、彼はけっこう実用向きが好きなんです。応用の利く物を買ってました」
芙柚は?って、これから行く丹羽家には居ないから訊かない風を装えるけど。
実は一番聞きたいところ。カオルは芙柚との思い出については、すぐに口を噤んでしまう。
あ~また、健の時と一緒で。ヤキモチ焼ける感じにイラッとする。どこまで俺の独占欲って強いんだろう。
俺の開発した身体だって、健を抱いてる時は信じて疑わなかったけど。
カオルを抱いた日、それはずっと引っかかり続けた。こんな風に芙柚の愛撫にも応えたのかなって。
後ろはしてなかったって聞いてたし、カオルからも「呆気なかった」ってコメントを貰ったし。それは俺しか知らないんだろうけど、なんかもやもやはするよね。
デートとかしたのかとか、本当はそっちも聞きたい。
水族館とか静さんと以来だって聞く度、可哀想にって思いつつ、芙柚と行ってなかったんだなってちょっとだけ優越感に浸ってた。
どんな、デ-トしてて、楽しかったの?健のふりしたカオルは。
好きだったの?芙柚は告げられたことないって言ってたけど、本当のところは、ねえどうだったの?
こんなの訊いて、泣かせるのが可哀想だから、我慢我慢。
あ~けっこう、俺って、余裕なくなるね、好きな子のことはどうしても。
「佐倉さん?あの、呼び名、呼び名どうしましょうか?佐倉さんの」
「あ~、う~ん呼べるかな。健も半年は苗字に君付けだったんだよね、舌回んないくせに。
俺の名前に君付けなんだけど。流石に、これから、このままでも夫婦で行きます挨拶に苗字はヤバいな」
「爽……くん。ですか?……どうしよう、恥ずかしいです」
頬染められるほど照れられても。もう、エッチまでしてる仲なのに。
「あと5分くらいで着くから、練習してたら?」
カオルは額に手を当て、う~う~呻ってた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
174 / 337