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”29” 王子パパ meet ネコ ‐3
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まだ咳が少し残ってるし、週末は何処に連れて行こうか。なんて考えながら、俺はカオルが言うがまま動いてる。
オレンジ色のホットパンツはすっかりカオルの活動着と化してて、相変わらす生足は魅惑的に俺の目線を釘付けにする。
「佐倉さん、お蕎麦、出来ましたよ~。食べちゃいましょ?」
「ふぁ~い。ほぇ、ひひほ?ほほはまへ」
「良いですよ。薬剤染み込ませるのに放置しなくちゃいけないんです。あ、手足はちゃんと洗って下さいね」
さっき、カオルに施されたタオルマスクを脱衣場でむしり取る。ふぅ、苦しかった。
「うわっ、鼻に来た!」
「あ、もぉ~!手洗ってから取らないから!まったく困った王子様ですね~」
「いやいや、クエン酸だの重曹だの黴取り剤だのが、この家にあったとは知らなかったもん。風呂場でラップだキッチンペーパーなんか使ってたとはね」
剥き出しの脚を拭い、きっちり手を洗い。捲ったズボンの裾を下ろす。風呂掃除デビューは、カオルの指示通りに動いただけだが、今のところ成功らしい。
「古歯ブラシが使用中の電動の先のしかない発言にはビックリしましたけどね。あ、大根おろしは多めの方が美味しいと思いますよ」
昼飯は揚げたてかき揚げ付きのざる蕎麦だ。サクサクで玉葱の甘みと数種の根菜が、旨っ。
麺汁がね、もちろんお手製で美味いんだ~。あ~もう、もりもり食っちゃう。
「しかし、カオルくんの言う通りだったな~サボってたんだ、前の清掃業者」
「えぇ。手抜きはお風呂場見れば分かります。多分、健の事だから出来て無いところは黙って自分でやって我慢してたんでしょうね」
今頃、健が電動歯ブラシじゃ磨いた気がしないって、手動派だった理由を知った。用途が古くなったら掃除に使えるからなんだ。古着も安易には捨てないし、雑巾代わりに使うつもりとはね、本当に出来た嫁だったんだなぁ。
「綺麗にするついでに、新しい業者を探してみたらどうですか?今年は二人とも余裕で時間の遣り繰りできるでしょうけど来春はまた忙しい医学生さんに戻るんでしょうし、心配です」
「なんか他人事みたいに言うね?」
「……きっと健が帰りますもの、その頃までには」
カオルが優しく微笑む。俺は言葉を失うんだ、その度に。
「僕、週末に行ってみたい所があるんですけど、どこかの水族館は延期しても良いですか?」
そしていつも空気を変えてくれるのはカオル。
「ん、いいよ~。何処かな?」
「美術館?博物館?あのテレビで紹介されてたでしょう?」
「あ~ダ・ヴィンチの展覧会か。やっぱり行きたいって思ったんだな~熱心に見てたもんな」
「僕、中学の時に博物館で、長蛇の列を我慢して見に行ったんです。受胎告知!感動しました」
「あ~めちゃくちゃ混んでると思うけどね。土日じゃ」
それこそ、ラッシュの電車並みにさ。俺はあんまり、芸術系に明るくない。
健はけっこう好きだったみたいで、図書館に行くと、芸術書のコーナー前で画集を広げてたりしてた。
カオルも好きだったとはね。ま、あんだけ、絵が描けるんじゃ、興味あるよね。
「……混んでますか、やっぱり。僕、それじゃあ、行くの諦めた方がいいですね」
「こら、しゅんとしないの。連れてくよ、ただ、土日じゃなくてもいいんじゃない?俺達、平日だって時間作れるんだからさ。だから、週末は予定通りどこかの水族館行って、今週はこっちに居て、空いてそうな週の中日とかに行こうよ。知ってる?テーマパーク系も週の中日が狙い目なんだってさ」
人混みで過呼吸やフラッシュバックの可能性があることはカオルも熟知してる。
今週末は、そのテストも兼ねて電車で移動することにしてる。しかも別々に出て新宿駅で待ち合わせ。
俺が1本早いので出て、カオルがその後で乗って来る。
土日はそんなに混まない。ましてや俺達の住まいに近い地下鉄駅から、JRの新宿駅は徒歩移動含めて10分程度の道程。そんな近距離から徐々に慣らしたいと思ってる。
実は歩く気になればJRの新宿駅から家までちょっと距離はあるが徒歩で余裕で来れる。俺は飲んだ帰りとか時々カロリー消費も兼ねて、のんびり歩いて帰って来る。
健には絶対させないけどね、怖いじゃない、何かあったらと思うと。(そしたら自転車に乗ろうかななんて恐ろしいことをぬかしたんだよな。事故も心配だけど、技術的に周囲の迷惑だってば)
新宿駅からは2人で目的地まで移動でって計画。
カオルは、大げさだし、そこまでしなくても大丈夫だと思うって言ったけど、それが出来たのは、病気になる前の話だ。
軽くだけど、病院で何回か過呼吸にならなかったっけ?ってひと睨みで大人しくなったけどね。
だから、混む場所はなるべく避けてあげる、それが俺達の暗黙のルール。
なにかあって、すぐにわかる時間じゃなきゃ、独り移動のテストだってしたくないって俺が言えば、悲しげに頷いただけだった。
カオルは不甲斐無いんだろうと思うよ、健の弱りっぷりが。
だって、中学3年間弱ずっと、痴漢だなんだから、自己防衛して頑張ってたんだからさ。
「いいえ、今週末のお出かけは遊びには行きません。その代わり明日、新宿に買物に行きましょう?
電車のテストはしたいんです。特に買いたい物はないんだけど、紀伊国屋さん見たりハンズさんに行ったり
ぶらぶらしたいなって思ったんですけどどうですか?」
「そっか、うん。いい。そういう目的なしで出かけたことないし。普通のデートっぽいよね」
自分で打開案を出したくせに、俺のデートって単語で、蕎麦つゆ誤飲して噎せってるし。
特に買物予定のない街歩きはデート以外の何物でもないだろうに。
また、健とは無理だなって諦めてたことが叶おうとしてるんだ。
「に、日曜日は、その、お勉強しますからね!だって、平日、遊ぶんだもの、代わりの日はお勉強しなきゃ。
あ、でも問題集置いて来ちゃいましたね。どうしましょうか」
「ん~じゃあ、大学の語学でもやる?第二外国語は、ドイツ語で、別に高校の学力関係ないし。
ん~実際問題、3年時点ではあんまり影響ないからやんなくてもいいかと思ってたけど、文法さえ何とかなれば何とかなるよ、やっとく?」
ここのところ、ハイペースで教え込んでるから、途端にげんなりした顔になった。
真面目過ぎるからな、遊ばないって自分で言ったくせにね~。
「……教科書、持って来たヤツので、授業してクダサイ。問題集抜きで」
「大学の授業で使わなそうなのは除外方針のままでいいってことだね?」
こくんって頷く。
「あ、でも、どんな内容なのか興味はあります、ドイツ語」
「ふ~ん。健も同じ理由で選択したな、なんで?」
「ドイツ語って、音楽には結構出て来ますよ。作曲家がドイツ人多いでしょう?」
「あ、あれ、授業でさ、教授が取っ掛かりになんかクラシックを流してくれてさ、曲名がまんまドイツ語って言ってたんだよな、なんだったっけ?」
「アイネクライネナハトムジークかな、多分。一つの小さな夜の音楽になるんでしょう?モーツアルトの有名な曲ですね」
鼻歌みたいに、少し歌ってくれる。健の歌声自体レアだ。上手いけど、普段、歌わない。
カラオケなんて誘われても曖昧に断ってしまう。曲がわからないって言って。
本当に機嫌のいい日の家事の最中、耳をそばだてて、盗み聞きして以来かも。
そんときも、何かのクラシックの曲だったような気がするな。
でしょ?って首を傾げられる。多分、そうかな。へぇ~モーツアルトの曲だったんだ。
「後で、テキストだけでいいので見せて下さい。難しいのかな~。お勉強の面では健は凄いな。
だって、佐倉さんよりも成績は良かったって聞いてビックリです」
「高校の頃、俺もビックリした。健ね、1年は一番下の成績順位のクラスだったんだ。
でも、後で、出身中学とか知ったりして、もしかして、俺の方が馬鹿じゃんってなったもん」
「2年生で一緒のクラスになった、その日に恋に落ちたんでしたよね?佐倉さんが」
「うん、一目惚れだった。こんなのどこにいたんだ~!って思ったよ」
「ふふふ。蓼食う虫も好き好きってやつでしょうかね?」
ご馳走様の後で、食器を片づける前に、カオルは麦茶を出してくれる。
もう少し話したいってサインだって、最近気が付いた。
「ね、黴取り剤とかまだいいの?」
「もう少し時間を取らないと。だから、あの、話をさせて欲しい、です。
……佐倉さんって、僕に遠慮してますよね?」
カオルがなんだか、浮かない顔してる。さっきまでのチャキチャキ奥さんモードじゃない。
「ん?なんでそう思うの?」
「……僕にずっとべったりだから。健の時もそうだった訳じゃないだろうなって。
東京も田舎にも、お友達いっぱいいるのに僕のせいで遊びに行けてないんじゃないですか?
独りで居るのはつまらないから、嬉しいけど、あの、なんだか、佐倉さんに申し訳ない気がして。
お義父さんも、佐倉さんのこと、こんな風に僕を中心にって、いいと思わないんじゃないかなって」
会わせるべきじゃなかったかなって、昨日からちょっと後悔してる。
俺の生活が、自分のせいで歪んだって、曲解した感があるんだ。
親父はどうも、煙に巻き過ぎたんじゃないかな……素直に取ってよかったんだけど。
「自分から手を放すなって言われなかったっけ?カオルくん」
「言われたのは健です。僕は代理ですよ。だから、健と過ごしてた時のように、佐倉さんも好き勝手できる自由な時間が無いとダメなんじゃないかなって思ったんです」
「それはカオルくんが、自由時間が欲しいから言ってる?」
「僕は、いりません。多分、健と一緒です。もともと、独りで居るのが好きなのでお友達だってわざわざ学校が終わって遊びに出向くなんて稀だったと思うんですが、違いますか?」
あ~健が、心の病気じゃなきゃ、もっと早く直面してたんだよね、このお互いの時間って問題。
専ら、滅多に行かない遊びに連れ出すのは、俺の役目。
俺がどこかに行かないかと誘うか、健が用事があるから一緒に来てくれないかと頼むかの方法でしか出かけなかったんだよね。
通学が苦手な電車に乗らずに済むようにって配慮は、裏目に出てる、こういう部分。
家の田舎じゃ、こうも便利にはいかないが、徒歩通学圏内の店で、殆どの用は事足りる。
このマンションも、横浜の実家も然り。で、大学の学部違いの友人はサークル活動もしない健には薬学部の圭介とノダカナだけ。圭介は同じマンション住まいだから、すぐに会えるし、ノダカナは異性で、あっちは社交的だからプライベートでも忙しいみたいで、時間を作って会いに来るんだ、向こうが。
大学の同じ学部の奴らとは、大学の中だけで充分なのかプライベートの行き来までしてるのは誰もいない、健は。
「稀どころか、殆んど無いかも。ふう、なんか俺、ちょっと反省した」
「え?どうしてですか。僕は、佐倉さんの迷惑になってるんじゃないかって言ってるのに?」
「違うよ。俺は、健の自由を奪ってたのかもしれないなって反省。
俺の側に置いて、俺が守ってあげるのが当たり前だって思ってて、事件の後、更にその思いが酷くなってたんだ。健の為って思いながら、本当は自分が健を籠に閉じ込めておきたかっただけなんだよ」
やっと気付けた。俺のダメな所。
「健の病気は、俺の過保護に都合が良かったんだ。俺が、健と一緒に居たかっただけなんだ。
高2からずっと、俺が健を独占し続けたいから、外に出してあげる努力をしなかった。ごめんね。
カオルくんが健のこと情けないとかダメな子だって思うのは間違い」
そっか、しかも、健は俺の自由を侵害したくないって、俺が健以外の人と遊びに行くのを嫌がったりしなかった。ってことは、健の方がわかってたってことだな。
「……佐倉さんと健って、馬鹿みたいに好きあってるんですね。わかりました。
僕は、佐倉さんの思い通りでいますよ。ごめんなさい、余計なことを言いました。
あ、そう、あのね!ただ、お願いが!お願いがあるんですよ!」
やれやれって言いたそうな顔で、カオルが俺を見て、急に切羽詰った声を出す。
「ん?何でも言ってみて、善処はするつもり」
「身体、外で運動とかして使って来て下さい。体力余ってるでしょう?僕、今夜も無理ですし」
「え~昨日我慢したのに~、そりゃないでしょう。お風呂ピカピカにして、そこでも楽しめますし~」
「週、3回目になってしまうでしょ、無理です。毎回、空にされてるんだし」
「あのね、カオルくん、空になった先がまた、健の身体はいいんだって。ちょこっと体験したじゃないの
月曜日の夜に~。あれ、気持ちいいでしょ~。あのまま苛め続けるとね……」
耳を塞いで嫌々してるカオルが可愛い。カオルになって、初体験になったであろう女の子イキをしちゃってる時にガンガン掘っちゃって、残ってたちょびっとの白濁出したトコロテンしちゃっての後で、自失しちゃったんだよね~。やっぱ、あれってすごい快感なんだねって良くわかった。で、俺もすっごく気持ち良かったんで、素っ裸で二人で寝ちゃって、風邪ひいたんだ、カオル。
やっぱり、懲りたか。あぁ~初心者の心を持つ、俺にしっかり慣らされた身体って、こんなところに弊害が。
日月連夜だったからねえ~。
「風呂掃除終わったら、じゃあ、空手道場に行って来ていい?
その代わり、美味しいお土産、買ってくるから、カオルくんも夕飯は手を抜いていいよ」
「はい、行ってらっしゃいませ。でも、どうして、手抜きしていいんですか?」
「信太郎って、こっちに来て出来た友達がいる。この間行ったクリーニング店のある商店街に魚屋を構えてるんだ。確か芙柚と同い年かな?そこで御造り作ってもらって来るよ。と、お総菜の大野ってところの鶏挽肉も入ってる親子信田煮がすんごい美味いの。その2品、おかずにしようよ」
カオルが、いいのかなって言いつつ、笑ってる。
「ご飯と味噌汁だけ作って待ってて?さ~て、先生、お風呂掃除の仕上げの仕方教えて下さい」
俺は、感動で大騒ぎしながら、隅々まで(すごいんだ、天井までやった!)磨き上げ。
カオルに送り出されて、久々に道場に顔を出せば、師範と、金曜の夜に飲み会付きを楽しみに集まってる大人軍団が居て。大いに暴れて。帰りに信太郎に羨ましがられ、お土産持参で帰った。
先にお風呂どうぞって言ってもらって、自分の掃除した風呂にのんびり入って。
湯上りには、お土産の2品と、胡瓜の浅漬けが足されたおかずで、カオルと遅めの夕飯を楽しんだ。
健とも、こんな夕餉をよくしてたことを思い出し、懐かしくも嬉しくなった。
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