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”29” 王子パパ meet ネコ ‐5
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「そう、ですよね……もうすぐひと月になりますもんね、健の部屋に入らないで。
お掃除だってしないといけないし、ね。うん。帰ったら……」
「あ、いや、いいよ。俺、この間、掃除機かけたし。無理に入らなくても、さ?」
丁度いいタイミングに、ウェイトレスがオムライスのランチを持って現れてくれてホッとする。
つーか提供時間が早くて助かったかも、さすが駅構内の店だよね。待たせないもん。
ランチタイムギリギリに滑り込んでる客なのに、カオルの注文の平日限定ランチも受けてくれたし。
俺の注文品もすぐに来た。俺はオムハヤシにしてみた。うん、そこそこ美味い。
カオルも女性に丁度か少し多いかくらいの量だから満足そうに、気を取り直して食べてくれてる。
「んふふ。昭和っぽい味ですよね、なんか。美味しいけど」
「俺は、嫌いじゃないよ。あ~健のオムライスが食べたくなったかな~。
あんまり作ってもらってないんだけど、時々、どうしてもって強請れば、昼とか作ってくれたな」
「ここのボルシチも美味しいですね。けど、佐倉さんだったら、もっといっぱい飲みたくなる量かな。お得ランチですもんね、おかわりは言えませんよね。
……けっこう、佐倉さんって、味覚がお子ちゃまなんですね」
「え~なんでよ。俺、好き嫌いとかないよ?」
「だって、好きなメニューが、お子様ランチのメニューだもん。あ、決めた。
明日のお昼は、佐倉さんの大人様ランチ作ってあげますよ、ワンプレートにいろいろちょっとずつの」
「健は面倒だって言ってたよ?そう言うの。いいの?」
「僕が、食べてみたくなったんですよ、お子様ランチ。
食べたの小学校低学年の時に数回かなって感じで。ほら、お祖母ちゃんとお出かけしなくなったでしょ?
それ以来だから。作ってみたくもなるとは思わなかったな。良いでしょ?嫌ですか?」
小首を傾げられてるけど、絶対、俺が喜んでるって解って言ってる顔だ、それ。
「じゃあ、これ食べたら寄り道しないで帰ろう。色々、買物しなきゃね。
冷蔵庫の中では食材足りないでしょ?そろそろ、商店街デビューする頃合いだよ、カオルくん」
「うわ!そう来ましたか~。う~ん、頑張りますね。普通にしてれば大丈夫なんでしょ?」
中身はカオルでも、俺が代わりに買物に出る度、クリーニング屋と和菓子屋の流した噂を聞いてる商店街の皆に責っ付かれてたんだ。
元気になったんなら、いつまでも隠しておくんじゃないって。人気者だからな~健。
記憶が無いったって、健ちゃんは健ちゃんだろって。あ、預かってもらってた糠床も引き取らないと。
「見て下さい!僕、完食しましたよ。お腹空いてたからかな~」
「うん。えらいぞカオルくん。じゃ、行こうね」
「ヤダ、今日は僕が出すんです!伝票下さい」
「え~チケット代も取らなかったじゃん、ダメ」
「いいの!たまには、僕に出させなさい!じゃないと次遊びに行かないですよ」
すったもんだしてるのが、妙に楽しい。
でも、今日はどうしても出すって言い張るカオルに任せることにした。
人混みとかそんなのが障害にならない、普通の人達のしてるデートってこんななのだろうなって、カオルだから体験できてる。
いつか、帰って来た健とも、出来るようになるといいなって思った。
同時に、健が帰ったら、カオルとは、こんな時間を過ごせなくなるんだなって寂しくもなった。
◇◇◇◇◇
なんか、忘れてる気がする。
ここ、数日思ってること。
「何、忘れてるんですか?」
ハンバーグをミニサイズに作る大人様ランチ用以外に、すぐ食べれるよう小分けで冷凍しておくって言い出し、キッチンで鋭意作業中のカオルを見上げて、俺は唸る。
「ん~、問題集のことですか?」
あ、俺は現在、カオルの為に、ダイニングテーブルで、色々カオルにどこまでわかるかリスニングしながら問題集を作成している。健の中学は、中高一貫の超有名私立学校だったからか、中3にして、高校の内容を先取りした授業も多々あるんだ。
高校1年の市販問題集を始めからこのままのこのペースでやってたんじゃ、イカンと思って。
大学で学ぶために、必要、不必要を選り分けて、市販のにプラスアルファーして補足してけば、早められそうだからね。
「違うと思う。けっこう大事なことのような」
「え?じゃあ、頑張って思い出さなきゃ。健絡みのことですか?」
「……のような、違うような、ん~なんだろう」
「佐倉さん、若年性健忘症……あ、痛ッ!叩いたら午前中の細胞のヤツ、忘れちゃいます」
伸びすぎて目に入る前髪をヘアピンでとめて、緩いM 字の可愛い全開オデコをペシッってしてみた。
「あ~髪、そろそろ限界かな~切りに行きたい?
俺は、けっこう可愛いからいいけど」
「切りたいですけど、今日はお出かけしたくないです。外、暑そうだから。でも、佐倉さんも大学に行ってたら、暑いなんて言ってられずにお勉強……えっ?どうかしましたか?」
うわ~思い出した~!!
「カオルくん、俺、休学届け未提出だった。
両方の親に挨拶したら、スッキリしちゃってたけど書類はまだだ。……うわ~我ながらバカ過ぎ」
つい、カオルと毎日、楽しくて……忘れてたよ。
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