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”30” 猫 VS ネコ -2
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また、何処かで、何かが大きく崩れた音が鳴り響く
どうしよう……どうして?
僕のお城が壊されてるんだろう、僕の意思が作った場所なのに
何が起きてるか、僕が、わからないなんて!
ムカムカしてくる
どこの誰が、僕のお城に勝手なことをしているんだって
恐怖心が怒りに変わり始める
「静さん」の時のような、感じに似てる
でも、彼女は、僕の世界を侵害し、修復はしたけれど、破壊は一つもしなかった
僕のお城で、意思を持って動けるのは僕だけだ
または、僕がある程度の権限を与えた存在のみで、その中の誰かだとしても
僕の嫌なことをするのは許せない、誰であろうと
探し出して、懲らしめて、そして止めさせなくちゃいけない
でも、どこにいる?
遠くでもあり、すぐ側でもある、四方八方から、壊されている感じ
風穴とはよく言ったもので、壊れた場所から、びゅうびゅうと風が入り抜けて行く
淀んだでもとても冷たい空気が、熱風にかき回されて行く
「やっぱりね。本当にいい目印になってる。見つけやすかった、カメ持っててくれたから」
僕の背後に開いている天井の穴から何かがズサッと落ちて来て
僕が振り返ると同時に、落ちて来たものは身を機敏に起こして
僕の喉元に強く光り輝く刀みたいな目には見えない何を押し当てる
「か、カオルくん?」
「見つけたよ、健。ほら、観念してこっちに来て」
カオルくんは今日も至るところが傷だらけで、血が滲んでいるのに
痛そうにもしないで、僕の目の前に、新しい青いマントを着て、すくっと立ってる
「こ、これは、カオルくんの仕業?」
「うん。僕しか、健の城をこんな風に破壊できる人いないでしょう?
今日はね、長い時間、健のお城で活動が出来る。この機会を待ってたんだ」
「長い、時間?」
カオルくんが、とても艶やかに笑う。
「うん。もう、僕は、あっちに帰らないからね。帰れないようにして来たら
「静さん」が僕に武器をくれたんだ。これで、健のお城を壊してしまいなさいって。
わかるでしょう?流れ込む空気の暖かさが」
光の剣を床に投げ捨てて、カオルくんが僕を抱きしめる
「佐倉さんの温かさに、健は包まれてるんだって、わかるでしょう。
もう、こんな場所は要らないんだ。早く壊してしまうべきだったんだ。わかったんだ。
僕達の保身の為に、無駄な足掻きをしてたんだ、僕もまた、ね」
ううん、カオルくんは抱きしめたんじゃない
僕に強制的に自分の命綱を付け替えたんだ
そっとカメさんのぬいぐるみを取り上げて、代わりにあのライトを持たされる
「嫌、ダメ!カオルくんと言えども、僕のお城で勝手は許さないよ。
これ外してッ。僕はここを離れられない。ここが壊れたら、僕の醜い思い出達が溢れて……」
「馬鹿な健。それは全部、健の心にもう収納し直されたんだから、溢れないの。
全部、見て来たんでしょ?健の逃げて来たもの全部。後は、健が抱えて独りで生きて行くの。
皆、そうして、自分独りで生きてるんだって、わかったんでしょう?
ならば、健も、そうして生きなくちゃね。いつまでもお城に逃げれるままじゃダメなんだよ」
出来ない、出来ないよって、僕は叫んで
カオルくんの身体につけ直そうとするんだけど
カオルくんは、また、刀を拾って、僕に向ける
そして後ろに飛びのき、空を一閃する
僕等の間の壁と床が、大きく抉られ、バリバリと凄まじい音を立てて裂ける
お城全体に一気に罅が入り、全体がぐらぐらと大きく揺れて軋み出す
「佐倉さん!お願い、命綱を引いて下さい!!健を頼みましたよ!」
カオルくんが叫ぶのと同時に、僕の腰の辺りに
痛いほどの力がかかって、強く引っ張られてくんだ
僕の身体は、宙に浮きあがり
温かい光の渦に引き込まれて行く
空中で引っ張られながら、僕の身体は抜け落ちた天井を潜り
どんどんと上昇して行くんだ
ガラガラと崩れて、木っ端微塵になって行く僕のお城で
カオルくんが僕を見上げ、カメさんのぬいぐるみを愛おしそうに抱きしめるのを見た
「カオルくん、ダメ!カオルくん、が、いなくなっちゃう!
壊れたら、皆が居なくなっちゃうんだよ~っ!嫌だ、独りなんか嫌~!」
瓦礫に崩れるお城の隙間から、最後に見えたカオルくんは、穏やかに微笑んで僕に小さく手を振ってくれてた
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