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そん時は、よろしく。
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柏崎と会話してて周りをよく見ていなかったが、ここはどうやら本殿の裏らしい。
今、俺の背後にあるのは本殿の柱で、左右には手入れされた植木があり、人は通れるが道とまではいかない。
だからなのか、俺達以外の人が通る気配はない。
とん、と俺の顔の横に柏崎の掌が置かれる。
『体で払ってもらいます。お守りの代金。』
「やっぱりな。」
やっぱ、コイツはコイツだった。
自分のしたことを“悪い事”と認識しつつ、だからといって弁解するわけではなくケロッとしていて、更に何かを仕掛け出す。
訳が分からない奴。
油断した俺にも非はあるが、それにしたってこれは無い。
久しぶりに本気出すか・・・。
俺は柏崎を睨もうと下がっていた顔を上げた。
しかし、勝負は始まる前に終わりを告げた。
『・・・って思ってたんですけど、止めました。』
「・・・えっ?はぁ!?」
素っ頓狂な声を上げる俺を尻目に、柏崎はあっさりと俺から体を離し、ひょいっと後ろに飛び退く。
そして、俺の顔を見て“変な顔”とクククッと笑い出す。
離してもらえたのは嬉しいんだが・・・何でだ?
ってか、笑い過ぎだっての。
俺の困惑に気付いたのか、柏崎は笑うのを止め、指を唇に当て、“う~ん”と唸る。
そして、考えがまとまったようで、“うん”と首を一回縦比振った。
『まだ時期じゃないなぁ、と。』
「んな時期、一生来ねェーよっ!」
すかさず突っ込むと、“手厳しいですね”とまたクスリと笑った。
ったく。
俺は財布から五千円札を取り出し、柏崎に押し付けた。
“いらないって言ったのに”とも言いたげな目でこちらを見、全く受け取る気配がないので、俺は仕方なく、さっき柏崎がやったように柏崎の右手を掴み、その中にお札をしっかりと握らせた。
手を離しても、お札は地面に落ちない。
「じゃ、アイツ等待たせてるし、俺は行くからな。」
『はい。お気をつけて。』
柏崎は左手をヒラヒラさせて俺を見送る。
俺は数歩先へと歩き、ピタッと止まった。
そしてクルリと振り返った。
「今年はオマエにとって良い年だといいな。
あけましておめでとう。」
柏崎の目が見開かれ、口がぽかんと開けられる。
あの時と、クリスマス前、部活終わりに二人で帰ったあの時と同じ顔を、した。
俺は柏崎へと一歩踏み出した。
しかし、あろうことか柏崎が一歩後ろに下がった。
今は側に行かないほうがいいかもな・・・
俺は柏崎と同じように手を振り、“じゃあな”と声を掛け、踵を返した。
見えないはずなのに、柏崎がふわりと微笑んだような、そんな気がした。
『あけましておめでとうございます、先輩。
僕なんかのことを気にしてくれて、ありがとうございます。』
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