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大誤算っ!
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昼夜の気温差が激しい。
それが秋の醍醐味だろう。俺はそう思う。
やれ”薄着し過ぎた”だの”クーラー効き過ぎ”だの、そういう失敗体験をするから、自然と荷物が多くなる。それが流れ。
俺だって例外じゃない。
暑いだ寒いだ文句言いまくってる。
今日だって、ベストで充分、いや、むしろYシャツだけでOKな気温なのに、ブレザーも一応カバンに入れた。
普通の男子高校生なら、”うわぁ~、また心配性発動しちゃった(笑)” と、なるだろう。
でも、俺にとってブレザーの存在は杞憂なんかじゃない。
なぜかって?
それは簡単。着る予定があるからだ。
日が落ちて暗くなって、肌寒くなるまで、俺は学校及び通学定期圏内の街をブラブラしている。
この理由も簡単。家に帰りたくないからだ。
こう言うと大抵の人間は家庭不和を考えるだろう。
違う。ほぼ不正解。点数で表すなら100点中3点。
母とは死別してるけど、親父との仲は良好だ。再婚相手もいないし。
ただ、その親父は今、海外に居る。
何がどう転じたのか知らないが、昇格という有難いお声を頂き、会社の海外進出にまで携わらせて頂くことになったらしい。
それに加えて、俺には兄弟がいない。
ここで、”なんだ、うさぎチャン症候群か”と落胆するのがオチだ。
違う。もうマイナス100点だ。
俺は寂しくなんかない。
強がりなんかじゃない。本心でそう思ってる。
寧ろ、もっと静寂が欲しいくらいだ。
何を贅沢な、と思うだろう。
それでいい。今は。
俺がこの無駄に派手な玄関のドアを開けるまでは。
このドアの向こう側に、俺の憂鬱の根源があるから。
俺は覚悟を決め、ドアに手を掛けた。
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