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大誤算っ!
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人の集中力とは凄まじいと思う。
部誌用の作品に【完】の文字を打った時、時計の針は午後10時をまわっていた。
やべぇ と呟き、のろのろと椅子から立ち上がる。
凝った肩を揉もうと挙げた腕を見て、まだ制服を着ていたことに気づく。
パソコンと共にログアウトした頭を必死に回し、スウェットに着替え、風呂の準備をする。
部屋に鳴り響く腹の虫の声。
でも空腹過ぎて気持ちが悪くなってる。
壁伝いに、揺れる廊下を歩いていく。
階段を1段1段ゆっくりと下りる。
本当は駆け下りてしまいたいが、今の俺は超絶注意力が散漫だから止めておく。
体も動かないし。
やっとの思いでリビングに着く。
灯りがついていることに若干の安心を感じ、首を振る。
何期待してんだよ、バカか俺は。
振ったことで、視界がさらに揺らぐ。
やっぱりバカだった。
ドアを開けると、テレビの前に正座していた奏がこちらを向く。
バラエティ番組だろうか。
絶えない笑い声が放たれている。
『どどどどうしたのっっっ?
顔色悪いよ?大丈夫っ?』
「騒ぐな。煩い。頭に響く。」
テレビの前から突進するように走ってくる奏を避けるように、俺はキッチンへ向かう。
麦茶を出そうと、冷蔵庫の扉を思いっきり引く。
ゴンッという感触と短い悲鳴がした。
どうやら、俺の後をついてきた奏に扉をぶつけてしまったらしい。
「あ・・・、悪りィ」
『大丈夫、大丈夫♪
全然痛くないよ?』
奏は、ヘラッと笑いながらVサインを出す。
何が大丈夫なんだよ・・・
俺は痛々しげに赤くなった奏の鼻を一瞥し、食器棚からコップを2つ出した。
麦茶を注ぎ、片方を ほらよ と奏に渡す。
奏はまたヘラッと笑い、ありがとう と受け取った。
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