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大誤算っ!
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コップを片手に、ソファに腰掛ける。
目の前のテレビに自分の姿がくっきり映る。
どうも奏は、人と一緒にいる時にテレビが点いているのが苦手らしい。
正確には、テレビというより、余計なBGMとなりうるものらしい。
テレビが目的ならまだしも、会話が目的ならば気が散って邪魔なだけ。 みたいなことを言っていたような気がする。
まぁ、電気代も浮くし、俺も迷惑だとは思ってないから、別にいいけど。
黒い画面越しに、奏が近づいてくるのが見えた。
俺の隣に座るつもりらしいから、少し横にズレてやる。
だが、半人分余裕があるにも関わらず、俺にぴったりとくっつくように座った。
何気なく、さらに横にズレても、ズレた分だけ寄ってくる。
全く距離が取れない。
「狭いんだけど。」
『我慢だよ、りっちゃん!』
キリッとした表情でファイトポーズをする奏にイラッとくる。
オマエなぁ と声を荒げるながらジトっとした目で睨むと、何をどう解釈したのか、
俺の頭を撫ではじめる。
当然、平手で打ち払った。
痛い、と涙目になる奏にイラつきを抑えることなく質問する。
「オマエ、今何した?」
『”痛いの痛いの飛んで行け”・・・。
りっちゃん、頭痛くて辛そうだったから・・・』
すっと奏の細くて白い指が俺の眉間に伸びてくる。
伝わってくる冷たさに顔が歪む。
奏はハッとしたように指を引っ込め、バツが悪そうに ごめんね と呟く。
俺は深いため息をつき、ムッとした表情を作る。
「中学生に、年下に頭撫でられたって嬉しくない。
それに”痛いの痛いの”とか・・・
俺はガキかよ。」
うぅ・・・、と唸り、奏は更にしゅんとする。
面倒臭ェ。
急にしおらしくなるなよ。
・・・調子狂うだろーが。
俺はわざとらしく咳払いをし、そっぽを向きながらぼそっと呟く。
「腹減ったんだけど。」
その瞬間、横でぱぁっと花が開花したような気がする。
すぐに用意するからっ! と奏がキッチンへ走る。
俺はその背中に向かって、コケて皿割るなよ?と冷ややかに告げる。
分かってる!と叫ぶ奏に、どうだかな と悪態じみた独り言を吐く。
支度ができるまでに風呂でも入ろうかと、俺は伸びをしながらソファを立ち上がる。
麦茶のおかげか誰のおかげか知らないが、再起動した俺の頭がリビングを見渡すよう指示を出す。
整理整頓され、掃除の行き届いた清潔感のある空間。
腐海の森と化していた以前の姿はどこにもない。
4か月前までの、あの目の当てられない状態。
それは奏が家に同居しに来た日から、拝むことはなくなった。
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