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大誤算っ!
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『知り合いの息子と暮らしてくれないか?』
ゴールデンウィークを目前としたある日、親父は恐る恐る俺に尋ねた。
腐海の森改良計画を練っていた俺は最初、その言葉の意味が分からなかった。
親父と一緒に海外出張に行くメンバの1人で、親父の直属の上司である桐生総一郎の一人息子と同居してくれとのことだった。
母親はキャリアウーマンで、普段から出張が多いらしく、息子の面倒を見ることができないらしい。
俺は、そんなんどこにでもあることじゃん、と親父の顔を見ずにつっけんどんに返した。
しかし、親父は弱腰ながらも引き下がらなかった。
その一人息子はまだ中学生で、しかも不登校で引きこもりなのだと。
はぁ?だから何?というのが感想だった。
実際に言葉にも表してたと思う。
冷静に考えれば、同情しなくもない状況だった。
不登校で引きこもりの子が部屋に、家に1人きりになってしまうのは、何とも寂しい光景だ。
だが、この時の俺は冷静とは言えなかった。
なにしろ、待ちわびていた一人暮らしに水を差されたのだから。
親父が海外に行くと聞いた瞬間、俺は行かないから、と質問される前に答えた。
必死に高校受験をし入った第一志望校を、はい分かりましたとすんなり辞められるわけがない。
それに、行きたくもない外国へ無理してまでついて行って、毎晩親父の英会話特訓に付き合わされるなど真っ平御免だ。
そんなほぼ不満と愚痴で構成された意見をストレートに伝えたところ、親父はそれを受け入れてくれた。
律はしっかりしてるし、世渡り下手だけどなんとか生きていけるだろう と。
今生の別れかよ と呆れるくらい泣き崩れる親父の背中をさすってやった。
まずは大掃除からだな と考えながら。
親父達の出張は3日後。
俺が出張のことを聞かされたのは4月中旬。
半月の間、俺の頭は一人暮らしをいかに満喫するかで一杯だった。
キレるのは自然のことだろう。
そんなこんなで、俺は断固として首を縦に振らなかった。
半ば逆キレ状態の親父に首根っこ掴まれて引きずられるように家を出ても、
どこから借りてきたんだと疑問に思うようなオンボロ軽トラに乗せられても、
通ったことのない道路を永遠と走っていても、
俺は同居を拒否し続けた。
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