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オマエら何なの?
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事のいきさつを知った雪里は、う~ん、と腕組みをする。
まぁそりゃ、う~ん、だよな。
まさか自分の突発的提案で、ここまでケンカになるとは思わないだろう。
当事者の俺でさえ、かなりビックリしてる。
奏がここまで反抗するとは思わなかった。
多少は揉めるだろうと腹は括っていた。
だけど、何だかんだ言って、納得してくれるだろうと、思ってた。
あの、俺を学校へ送り出すような、柔らかく、微かに寂しげな笑顔で、
”いってらっしゃい、楽しんできてね”と言ってくれると思ってた。
でも、違った。
ショック、なのだろうか、俺は。
奏があそこまで俺に悪意を示したことを。
いつものような小競り合いで終わらなかったことを。
翌日になっても、わだかまりを残してしまっていることを。
はぁ、と俺は深く溜息をつく声と、雪里の叫び声が重なる。
『あ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!』
耳がギンギンと痺れる。
クラスの奴らも、耳を抑えた。
煩いっ!と頭にチョップをかまそうと手を振り下ろすが、雪里に真剣白刃取りされる。
ガシッと挟まれたまま俺の手は、俺と雪里の顔の間に移動させられる。
放せ、と声を荒げるが、本人には聞こえていないらしく、
そうだよ、その手があったよ、とルンルンし出す。
何なのコイツ、朝っぱらからウザいし訳分からん。
いい加減にしろ、と振り払う。
振り払われた手は、流れに乗るようにして、今度は俺の肩をがっしり掴む。
そして、揺らすは揺らすは。
興奮したと言うかハイになったと言うか、いつもより激しく揺すぶられる。
出る。朝食、出る。出ちゃう。
『いいコト考えちった!』
「なっ、何っ、だよっ!」
雪里は、俺を揺らしながら、知りたい?知りたい?と、
”知りたい”を無理矢理引き出すような問いかけをする。
いや、知りたいとか教えてほしいとかの前に、揺らすの止めろよ。
ようやく止まったかと思うと、自分を指差した雪里から、爆弾が放たれた。
『オレがお前ん家に行きゃいいんだよ!』
「・・・え゛?」
そうなんだよ、それしかないよ、と一人でうんうん頷き熱くなる雪里に対し、
俺は冷水を浴びせられたように、体内から一気に温度が消えていく。
待て、待て待て待てっ!
それは無いだろ!?それはっ!
確かに、俺と語りたい雪里と、俺から離れたくないと言う奏の要求を同時に満たすことはできる。
でもそれは
「却下だっ!」
『えぇ~!?
いいじゃん!久々に律ん家でお泊りぃ』
昔はよく泊めてもらったじゃん、とブーブー言う雪里に、俺はダメだと言い続ける。
俺はいいんだ、別に。
雪里が来てくれるのならば、大歓迎だ。
でも、問題は奏だ。
奏があの家に他人をあがらせるなんて、しかも、そのまま一晩滞在するなんて、許すわけがない。
いや、そもそもアイツは同居人、居候の立場なのだから、家主代理の俺が許可すれば、それに従わねばならない。
でも、アイツは今や、家長不在の間、家を守り抜く立場まで押し上がっているのだ。
上下関係など、あって無いようなものだ。
あるのは、年の差だけ。
「何度も言うが、ダメッたらダメ。」
『へぇ~へぇ~、そーかよ。
そんなに奏チャンとの愛の巣に入れたくないかよ。』
は?なんだそれ。聞き捨てならん。
俺は雪里を睨む。
その行為が嫌味を助長させる。
新婚みたいだもんねぇ、とか、家ではダーリン・ハニーとか呼んでんじゃねぇの、とか。
ブチッと何かが切れた音と共に、俺は叫んでた。
「そんなんじゃねぇってこと、証明してやるよっ!
家に来いっ!
でもって、二度とそんなことほざけねぇようにしてやるよっ!」
はぁはぁと肩で息をする俺に、雪里はニヤッと笑い、
じゃ、そういうことで♪、と前を向いて着席する。
ハメられた、と気づいた時には授業開始のチャイムが鳴り響く。
その後はもう、のらりくらりと逃げる雪里を一日中追いかけ、
結局訂正することなく、
日にちだけが過ぎていった。
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