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オマエら何なの?
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~奏side~
ドアが閉まり、パタパタとりっちゃんの足音が響く。
階段を上り切り、静かになったのと同時に、ボクは床にズルズルとへたりこんだ。
まさか、本当にしてくれるとは、思わなかった・・・。
脅し半分、面白半分で、言ったんだ。
長谷川を襲うなんて、冗談だったし。
りっちゃんがどう解釈したかは分からないけど、どっちの意味でも、結局はやらないつもりだった。
寝てる長谷川に攻撃するなんて、さすがにルール違反だし、
それに、ボクの初めてはりっちゃんと、って決めてるし。
りっちゃんも、”そんなこと死んでもやらねェよっ!”って言って突き放すと、思ってた。
それでよかった。
りっちゃんとじゃれ合えるだけで、よかった。
それなのに。
ボクは頬に手を添えた。
りっちゃんの唇が当たった、左頬を。
まだ熱が引かない。
ボクが毎晩密かに重ねていた、あの唇が、自発的に、ボクに、触れた。
不思議だった。
夢のような出来事だった。
この先一生運に恵まれなくなりそうなくらい、奇跡的だった。
それなのに。
「おかしいな・・・
全然喜べない・・」
理由はわかってる。
ボクは、多分・・・
”淫らだったぜぇ~、あの時の律は”
長谷川の言葉が頭をよぎる。
「ははははは・・・
全っ然分かってないよ、アンタ・・・」
りっちゃんはねぇ、そんなんじゃないよ・・・
あの人はね、
ぶっきらぼうで、すぐに手足が出て、押しに弱くて、繊細で、照れ屋で、
「とってもとっても、優しい人・・・」
大丈夫か?痛くないか?って、
自分だっていっぱいいっぱいなのに、ボクのことばかり心配してくれる。
”淫ら”なんて言葉とは正反対の、清くて、丁寧で、愛しさが溢れてる、そういう人。
そんな気がする。
ううん、そうに決まってる。
あの人なら、りっちゃんなら・・・絶対、そうしてくれる。
視界が、滲んでいく。
頬を伝う、一筋の涙。
「あっ、あれ・・・おかしいな・・・
なんで涙なんて・・・」
抑えても抑えても止まらない、雫。
覆った口から漏れ出す、嗚咽。
閉じた瞳に映る、微笑みを浮かべたりっちゃん。
りっちゃん、りっちゃん、りっちゃん、りっちゃん、りっちゃん、
「りっ・・・ちゃ・・・ん・・・っ」
どうしてこんなにキミが好きなんだろう・・・
どうしてこんなに苦しいんだろう・・・
どうしてこんなにキミを求めてしまうんだろう・・・
どうしてこんなにキミを束縛したいんだろう・・・
どうしてここまでなる前に、離れなかったんだろう・・・
好きで好きでたまらなくて、キミのすべてが欲しくて、キミが他の誰かといるのが許せなくて、キミが他の誰かに見つめれてるのが憎らしくて、ボクとキミ以外の存在が邪魔でしかたなくて。
でも、そんなことを思ってる自分が一番嫌いで、こんな汚い自分を知られたくなくて、でも知ってもらえたら楽なのにと思ってて。
殴られても蹴り飛ばされても罵倒されても、キミのことが嫌いになれなくて、どんどん想いが募っていくばかりで何もできなくて、嫌われたくないって思って、どんどん臆病になっていって。
でも、やっぱり、
「好き・・・
大好きだよぉ・・・っ」
キミの一番になりたい。
キミに愛されたい。
キミと一つになりたい。
キミと共に生きたい。
キミが隣にいてくれるような自分に、なりたい・・・
夜が明けるまでには泣き止もう。
そしていつもの笑顔で迎えよう。
泣きはらした顔を見せるのは、明日だけにしよう。
もう逃げないと、誓おう。
ボクはパジャマの袖で顔を拭き、立ち上がる。
リビングの電気を消して、暗闇の中で頬に触れる。
「おやすみ、りっちゃん・・・」
早くキミの望む自分に、なるからね?
だからそれまで、キミの隣を空けて待っててね?
ボク、頑張るからっ!
~奏side~ END
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