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バカか、オマエは。
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"イベントの魔法"
普段話さない人と仲良くなれたり、
苦手だと思っていた人の意外な一面を知ったり、
男女の仲が急接近したり。
そんな様々な効果をもたらす不思議な力。
それが、"イベントの魔法"。
この硯木高校にも、その影響はあるわけで。
友情の輪が広まったり、仲違いをしていた奴らが親友になったり。
カップルが出来たかは、不明。
誰も突っ込まないし、突っ込んじゃいけないような気がするし。
そんな硯木高校生徒一同は、本日、文化祭一般公開に奮起している。
普段はむさ苦しい校内も、お祭りムードで華やかになり、
他校生や一般客で賑わっていた。
女子の来校に、あからさまに鼻の下を伸ばす奴らもいたり。
かくいう俺はというと、
「ホントに大丈夫なのか?」
『な、なんとかね・・・』
俺の服の端を摘まんだ奏を連れて、校内を廻っていた。
"りっちゃんの学校の文化祭、ボクも行きたい"
文化祭3日前の晩飯中、奏が突然声を張り上げて、こう告げた。
どういう風の吹きまわしだろう。
俺はそう思った。
奏は同居し始めてから、俺の家から近所のスーパーにしか足を運んでいない。
しかも、それは大分マシになったほうらしく、同居以前の2年間は、自宅からも出ていないらしい。
まぁそりゃ、引きこもり少年だからな。
そんな奏が、自分から、外出したい、と言ったのだ。
驚かないわけがない。
普通なら喜ばしいことなのだろうが、俺は手放しには喜べなかった。
だが、ダメだとは言えず、
代わりに、"俺と一緒に廻るなら"、と約束を取り付け、今に至る。
ウサギの耳フード付きのパーカーを着込み、人混みの中をビクビクしながら歩く奏を、俺は本気で心配になる。
摘ままれた服から、震えが伝わってくる。
3日前に見た、奏の切羽詰まったような顔が、フラッシュバックする。
「無理だけは、するなよ?」
『う、うん・・・』
分かっていた。
すでに無理をしてると。
でも、俺はそれを知らないふりをした。
奏がそうして欲しいと、言っているような気がして。
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