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バカか、オマエは。
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『ケーキが食べたい・・・』
ずっと黙っていた奏が、絞り出すようにして呟いた。
目線には、洋菓子研究会主催のケーキバイキングの幟があった。
わかった、と俺は学食堂へと方向を変えて歩き出す。
ありがとう、と小さく微笑む奏は、何というか、弱々しかった。
学食堂へと行く道すがら、数々の人に呼び止められた。
"オレんトコの店、寄ってかない?"と勧誘する男子生徒。
"道に迷っちゃいました"と助けを求める他校生。
"一緒に写真撮ってください"って女子のグループにも、何回か遭遇した。
撮らなかったけど。
なんで写真に映らなきゃいけないか、わからないし。
それに、
"随分モテモテだねぇ、りっちゃん"
と変に抑揚のついたセリフが、背後から聞こえたし・・・。
やっと学食堂についた時には、客入りのピークが過ぎたようで、ガラガラだった。
人がまばらなことと、甘い物に囲まれた嬉しさからか、奏は元気を取り戻したようだ。
目を輝かせて、次々とケーキを皿にのせていく。
丸テーブルにつくと、いただきます!と、一つずつ手をつけていく奏は、とても幸せそうだ。
「喉、詰まらせるなよ?」
『っ、わかってるよ〜♪』
"りっちゃんは食べないの?"、と訊く奏の頭を、
"その分奏が食べるだろ?"と言って小突く。
意味が分からなかったのか、奏は首を傾げる。
俺はそんな奏の鼻を摘まんでやる。
ふびぃ、と鳴く声に、俺は吹き出した。
酷い!と抗議する奏。
俺は笑いを抑えながら、悪ィ、と謝る。
『さっきの、どういう意味なの?』
「あぁ、あれ?
俺が奢ってやる、って意味。」
『奢ってくれるの?』
「金、持ってんの?」
奏は首から提げた財布を開き、ガクッと肩を落とす。
やっぱ無いんじゃん、と、俺はまたククッと笑う。
ムッと赤くなる奏に、だから悪ィ、と言って、
俺は立ち上がる。
「何食べたい?
取ってきてやるよ。」
『ん?
じゃあ、モンブランと、レアチーズケーキと、ショコラケーキと、あとショートケーキっ♪』
了解、と俺は取りに歩き出す。
ホント、好きなんだな、ケーキ。
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