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バカか、オマエは。
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お化け屋敷に行く、とは言ったが、
それは奏と雪里を離すきっかけ作りにすぎなかった。
だから、奏が入りたくないと言えば、他の店に行くつもりだった。
しかし、雪里に触発されたからか、
奏は俺より乗り気で、お化け屋敷に着いた途端、グイグイと俺を引っ張って中に入っていった。
入り口で、お岩さんの格好をした生徒が、"お気をつけて"と、不気味な声を出す。
俺は、そりゃどーも、と軽くかわしたが、奏はそれだけでめちゃくちゃビビってる。
無理なら引き返すぞ?、と訊いても、大丈夫、と強がるだけだった。
中は、まぁ、生徒が作ったわりには、よく出来ていた。
柳の木が不気味に揺れてたり、スモークが焚かれてたり、お経が聴こえてきたり。
ありきたりだが、こんにゃくもぶら下がってたり。
お化け役の生徒のメイクも、凝っていて、いきなり出てきたら、さすがの俺もビビった。
でも、まぁ、絶叫するほどではなかった。
これだったら、1人で入っても別に問題はないだろう。
雪里が言うほど、度胸試しには向いていない。
しかし、俺の前を歩いていたはずの奏は、いつの間にか俺の後ろに居て。
脅かし要素にぶち当たる度に、腹の底から絶叫していた。
俺は、恐怖でその場にしゃがみ込む奏の肩に手を置いた。
「おい」
『ギャァァァァァァァァァァッ!』
恐怖のあまり防衛本能が働いたのか、奏は暴れ出す。
必死に俺だと主張すると、やっと正気に戻ったのか、りっちゃんかぁ、と安堵の息を漏らした。
「そんなに怖いなら、リタイヤするか?」
『ヤダッ!』
俺は"リタイヤ"と書かれた看板を指差しながら訊くが、奏はガンとしてきかない。
それでも尚、その場からうずくまって動かない奏の手を、俺は掴んで立ち上がらせる。
ビックリする奏に、歩けるか?と訊く。
おずおずと頷くのを確認し、俺は手を掴んだまま奏を引っ張って歩き出す。
「さっさと出て、ちゃっちゃと次の店、行くぞ。」
『・・・うん』
繋がれた手から伝わる熱は、俺のものか、それとも奏のものか。
分からないけれど、
とりあえず、奏の震えが止まったことに、俺は密かにほっとしていた。
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