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バカか、オマエは。
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〜奏side〜
"バカか、オマエは"
りっちゃんの口から出た、衝撃の、言葉。
バカ・・・?
バカって何?バカってっ!
人が真剣に悩んでるのを見て、"バカ"ってっ!
ボクは思いっきりりっちゃんの頬を叩いた。
バシンッ!と高く大きい音が、静寂を切り裂く。
叩いた手がジンジン痛む。
叩かれたほうはもっと痛いのだろうと、頭の中の冷静なボクが、考える。
それでもやっぱり、侮辱されたような感情が、ボクから罪の意識を消し去っていた。
涙目でボクはりっちゃんを睨む。
りっちゃんは、叩かれたまま、何も言ってこない。
ボクは狼狽えた。
ボクは、恐怖を感じた。
痛がることも、怒鳴ることも、殴り返すこともしない、りっちゃんに。
何分経ったのだろう。
りっちゃんの口から、息が漏れた。
溜息とは何かが違う、特殊な吐息が。
『オマエさぁ、人が1日やそこらで変われると思ってんの?
ましてや、2年も人との関わりを絶ってたオマエが。
無理なんだよ、そんなんは。』
「無理じゃないっ!」
ボクは叫び、りっちゃんの胸ぐらを掴んだ。
許せなかった。
否定された。
全てを。
ボクの努力を。
至近距離にりっちゃんの顔がある。
掴まれてもなお、感情が読めない顔は、崩れなかった。
『いいじゃん。
オマエはオマエのままで。』
はぁ?、とボクは意味が図りかねない風に尋ねた。
内に閉じこもったままのボクでいい?
りっちゃんにしてみれば、ボクが内に居ようが外に居ようが、どうでもいいのだろうけど、
さすがにそんな言い方はないんじゃない?
ボクの両手に、さらに力が入る。
その手を、りっちゃんの手が包み込んだ。
『いいじゃん。無理して変わろうとしなくても。
ウザくて、ベタベタしてきて、自分の都合良く勝手に解釈して浮かれて、意地っ張りで、強がりで、泣き虫で、どうでもいいトコに全力になって、
俺の周りを"りっちゃんりっちゃん"飛び跳ねてる。
そんな奏のままで、いいじゃん。』
この人は、何者なのだろう。
この、満足げに鼻を鳴らしている、
ボクの隣に座るこの男の人は、
何者なのだろう・・・
なんでこの人は・・・
こんなにも・・・
腕の力が、緩む。
視界が、滲む。
ボクの手を包んでいた指が、ボクの涙を掬う。
倒れるボクの体。
それを優しく受け止める、りっちゃんの腕。
鼻をくすぐる、りっちゃんの匂い。
今、心から思う。
ああ、やっぱりボクは、
この人が、好き。
ボクの最愛の人は、
どうしてこんなにも、
ボクの欲しい言葉を、くれるのだろう・・・
りっちゃん、と呟くと、
ホント、バカだよな、奏は。 と返ってくる。
そうだよ、バカだよ。
バカなくらい、キミが、好きなんだよ・・・
〜奏side〜 END
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