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バカか、オマエは。
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俺は俺の胸に体を埋める奏の頭を撫でながら、"ゆっくり、確実に変わっていこうぜ?"と諭す。
うん、と頷く奏。
ホント、バカ過ぎだよ、コイツは。
でも、そういう俺も、バカの類いで。
奏を怒らす言い方をしていたとは、全然思ってなくて。
叩かれた頬が、まだヒリヒリしてる。
本当は凄く痛かった。
奏の全力の平手を受けて。
でも、ここで痛がった素振りを見せたらダメだと、我慢していた。
強がりなのは、どっちなんだろうな?
そう思うと、なんだか妙に恥ずかしくなる。
恥ずかしさを隠すため、奏の肩を"もういいだろ"と押す。
奏は意外にもすぐに体を離した。
その顔は、なんだか吹っ切れたように清々しかった。
『ありがとう、りっちゃん。』
「そりゃ、どーも。」
俺の返しに、奏は嬉しそうにクスッと笑う。
何がそんなに嬉しいのだろうか、
そんなことを考えて見ていると、
すっ、と奏がソファから降り、
俺の足元に跪く。
"今度は何をやらかすつもりなんだか"
そう思ったのも束の間、
奏は俺の手を取り、キスを落とした。
「なっ?何すんだよっ!」
離せ、とばかりに奏の手を大きく振り払う。
慌てふためく俺をクスクス笑う奏の目は、なんだかネコみたいだった。
りっちゃん、と名を呼ぶ奏に、俺は迷惑そうに返事をする。
『ボク、キミのために、キミが望むボクに、変わってみせるよ。』
「は、はぁ???」
なんだよそれ?
俺がいつ、奏に何かを望んだんだよ?
いや、たしかに、"今のままでいい"とは言った。
しかしそれは、無理してる奏が痛々しかったからで!
俺は奏がどう変わろうが、興味無いし関係無いわけで!
いや・・・待て。
最近の俺、奏と過ごすこと、楽しんでないか・・・?
そもそも俺、コイツと関わる気、無かったはずじゃなかったか・・・?
最近の自分の奏への言動を思い出し、1人で混乱して頭を抱えて唸る俺を、奏はニヤニヤと見つめていた。
恥ずかしさと悔しさから、俺は奏に向かって"自分のために変われよっ!"と叫んだ。
奏は、はいはい、と、絶対分かってないような返事をした。
『りっちゃん!寝ようっ♪』
そう行って飛び跳ねて立ち上がった奏は、すぐに俺へと倒れ込んできた。
不意をつかれたことと、いきなりの重みで声を失う俺の耳元で、"痛い"と呻き声がする。
着地した瞬間、ガラスで切った足が痛んだのだろう。
何が起こったかようやく分かった俺は、溜息をつく。
ごめんね、と慌てて離れようとする奏を、俺は強く抱きしめ、そのままソファから立ち上がり、リビングの電気を消しに歩き出した。
抱き抱えられたことにビックリしたのか、奏はジタバタと手足を動かす。
そんな奏に、"振り落とすぞ?"と言うと、?っ、と呻き、静かになる。
俺はそのままリビングから出て、階段を上る。
そして自分の部屋に入り、ベッドの上に奏を降ろした。
奏が不思議そうに、りっちゃん?と呼ぶ。
俺は答えず、部屋から出た。
そして、また戻ってきて、奏の部屋から拝借した枕を奏に放り投げた。
「一緒に寝るんだろ?」
『うんっ!?』
にっこり笑って、"次ケガした時は、お姫様だっこで運んでねっ!"、と言う奏を、俺は布団の中に閉じ込める。
ワタワタとうごめく奏を、
"可愛い"
と思ってしまう俺は、
一体、どうしてしまったのだろう。
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