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誰に何て言われようと。
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2時間くらい経った頃、
奏の"出来た!"と言う声に、俺は目を覚ました。
どうやら、居眠りをしてしまったらしい。
悪ィ、と謝ると、大丈夫!と明るく返ってきた。
奏がこういう奴で、ホントよかったと思う。
さて、と俺は、解答解説ブックを片手に、奏の解答に丸つけを始める。
国数英の3科目。
マークシート式なので、時間はあまり掛からなかった。
結果は、微妙だった。
国語は、凄くよく出来ていた。
いろんなジャンルの本を読んできたらしく、古文・漢文もほぼ満点だった。
英語は、会話文の穴埋め問題は何となく聞き語りで覚えたのか出来ていたが、単語や長文読解がボロボロ。
数学は、もう、壊滅的なデキだった。
総合的な得点は、前年度の合格者の平均点数より80点低かった。
得意の国語が、救ってくれたようだ。
う?ん、と悩ましげに唸る奏の頭を、俺はポンッと叩いた。
「入試は2月だぞ?
今から頑張れば、きっと大丈夫だ。」
『本当に?』
俺は深く頷いた。
そっか、頑張るよっ!、と奏は笑顔になり、解答解説ブックとにらめっこを始めた。
俺はそんな奏を、微笑みながら眺めていた。
合格出来る確証は、無い。
入試まで、残り3ヶ月。
どこぞの教師ならば、
"諦めろ"、"行くならもっと安全圏を狙え"と諭すだろう。
それが本人のため、なんて言って。
でも、俺はただの高校生だ。
入試をくぐり抜けてきたとは言っても、エラソーなことを言えるほどの立場じゃないし、言うつもりもない。
それに、俺は信じているのだ。
この、桐生奏という男を。
コイツなら、絶対合格してくれる。
そう、信じているのだ。
それから奏は、猛勉強をし始めた。
家事や料理教室はサボらず続けていたが、それ以外の時間を勉強に費やしていた。
意外だったのは、俺が勉強を教える、という申し出を断ったことだった。
自己流じゃキツイぞ、と何度も説得しても、
"自分でやるから"、の一点張りだ。
そして、家事を分担する、という提案もあっさり拒否された。
いや、そもそも、奏がヒマだからという理由で家事を任せていたのであって、奏が忙しいのに押し付けるほど、俺は鬼じゃない。
でも、奏は首を縦には振らなかった。
"それじゃ、意味がない"、らしい。
そして、奏は、俺にベタベタしなくなった。
その分、一緒に寝ることは増えたが、ソファで引っ付いてきたり、
風呂を覗こうとしたりしなくなった。
別に、それが普通なのだ。
しかし、何だか、俺は落ち着かなくなってしまった。
奏が隣に居ることが"当たり前"となってしまっていた。
"寂しい"
その一言が頭をよぎるが、
俺は無理矢理それを消し去り、
学業及び執筆活動に専念した。
俺達は、互いに離れて過ごすことが、増えていった。
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