アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
誰に何て言われようと。
-
ホームルーム、と言っても、ショートではなくロングのほうだ。
月曜日の1限目がLHRなので、朝のSHRに引き続く。
担任が黒板に大きく
"学校説明会 役員補佐" と書いた。
そういえば、今週の土曜日は学校説明会か。
大方、役員が足りなくなったから急遽かき集め始めたのだろう。
俺は担任の話を聞くことなく、窓の外をぼーっと眺めていた。
奏は、この説明会に行くと言っていた。
入試情報とか得たいから、と。
俺としては、その考えには賛成だった。
人混みになるだろうから、多少不安だが。
しかし、それ以上に問題なことがあった。
奏は、電車に乗れないらしいのだ。
いや、正確には、乗れなくなったのだ。
人嫌いで。
この学校は、俺の家から電車で行かなければならない。
車を廻してくれるアテもない。
そして、学校説明会は制服参加が義務付けられていた。
奏の制服は今、桐生家にある。
電車か車で行くしかない距離の。
自転車でも頑張れないことはない。
しかし、俺も奏も、サイクリングの旅に出る時間は無い。
"私服の学校です!"と言い張る手も使えない。
私服登校の生徒は、事前に学校ごとに予約がしてあるから、すぐにバレる。
そもそも、制服は買ったものの、一度も袖を通してない、
つまり、一度も登校していない奏が、はたして制服を着て"生徒です"と言って良いのだろうか?
と言うか、義務教育を受け終わってない奏が、高校受験など出来るのだろうか?
考えれば考えるほど、疑問の渦に巻き込まれていく。
そんな俺は、担任に話しかけられていることなど知らなかった。
『律、律っ!
ヤバイよ、律っ!』
「は?」
雪里の"ヤバイ"で現実に戻った俺は、
青筋を浮かべる担任と目が合った。
『上村、聞いてたか?』
「いえ、全く。」
俺の言葉に担任は、"そうか"と呟き、
背を向ける。
担任は黒板の、
"学校説明会 役員補佐"の横に、
"上村 律"と書いた。
『役員補佐は、上村に決定した。』
クラス中がザワザワと騒がしくなる。
あちゃ?、だの、ドンマイ、など、様々な言葉が俺に降りかかる。
1番騒がしかった雪里は、担任に向かって"横暴だ!ある意味体罰だ!"と叫ぶ。
俺は冷静に、でも嘘偽りなく、言葉を発する。
「先生、面倒臭いです。」
担任は、そうか、と言って、廊下を指差した。
"廊下に立っていろ"ということだろう。
今時流行らないぞ、担任。
俺はそう思いながらも、席を立ち、教室から出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 124