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誰に何て言われようと。
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俺は柏崎を追って体育館を出た。
柏崎の不審な行動に、嫌な予感がしたから。
いきなり走り出した俺を、不思議そうに見る教師や来校者。
俺を止める声も聞こえたが、構わず走り続けた。
走って追いかけたにも関わらず、俺は柏崎を見失ってしまう。
だが俺は、廊下を歩く人々の目撃情報を頼りに、柏崎を探し回った。
何の根拠も無いが、アイツは何かやらかすつもりだ。
そう、感じた。
"アイツを見つけなければ"
それだけを、俺は考えて走った。
そしてようやく、俺は柏崎を見つけ出した。
空き教室が並んだ廊下の真ん中に、柏崎の背中が見える。
誰かと話をしているようだが、相手は俺の位置からは見えない。
多分、他愛ない立ち話だろう。
俺はそう思って、トイレの入り口に隠れた。
柏崎に俺の存在がバレて逃げられたりしたら、元も子もないと思った。
トイレの入り口は、良い感じに柏崎達2人には死角になってくれた。
2人の会話は、あまり聞こえなかった。
まぁ元々、そんなことに気を削いでいる場合ではないと思ってたんで、あまり気にはしていなかったが。
しかし、それは間違いだった。
柏崎の口から出た言葉に、俺は心臓を握り潰されたような感覚に陥った。
"君みたいな汚れた人、この社会に必要なのかな?"
「は・・・?」
何だよ、それ?
"汚れた"って何だよ?
オマエ、人にそんなこと言えるほど偉いのかよ?
俺は、飛び出しそうになった。
しかし、柏崎に暴言を吐かれた相手が、俺の居る方向へ走ってきた。
俺はとっさに身を潜めた。
目の前を走り抜ける、涙を浮かべた見知った横顔。
「奏・・・?」
俺はその場に立ち尽くしてしまった。
柏崎に詰め寄ることも、奏を追いかけることもせず、ただだだ立ち尽くしていた。
胸に鉛の塊が詰まったように、息苦しい。
「奏が汚れた人間って、どういうことだよ・・・?」
俺は壁にもたれ掛かりながら、柏崎の様子を窺った。
奏を追いかけられるほど、状況が掴めていなかったから。
あれだけ辛辣な言葉を吐いたにも関わらず、
柏崎はいつものように、貼り付けたような笑顔を浮かべていた。
そして、廊下に転がる黒い布を抱え、ゆっくりと奏とは逆方向に歩き出した。
俺は一定の距離を開けて、柏崎を尾行する。
いつ気付かれるかと恐怖を感じたが、そういう素振りは全くというほどなかった。
太陽の光が眩しいほど反射する廊下を、役員腕章を付けた男子2人が歩き続ける。
体育館からマイクを使って喋る声が微かに聴こえる。
もう、どのくらい時間が経ったのだろうか。
そう考えるだけで、
俺は腕時計を見ることは、しなかった。
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