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誰に何て言われようと。
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廊下を永遠と渡り、やがて昇降口に差し掛かる。
柏崎はそこで靴に履き替え、外に出た。
履き替える間に見失うかもしれないので、俺は上履きのまま後を追った。
柏崎は廊下同様、黙々と歩き続ける。
俺も必死についていく。
尾行して分かったことだが、
どうやら柏崎は、人気の無い場所を探しているようだ。
だとしたら、なぜ空き教室を使わなかったのだろう。
あそこは普段からあまり使われていないので、人はあまり近づかない。
そしてなぜ、わざわざ人通りの多い校舎外に出たのだろうか。
土曜日ということで、部活に勤しんでいる生徒が多いというに。
柏崎の不可解な行動を含めて、
今日起きたすべての事を明らかにすべく、俺は尾行に集中した。
やがて、柏崎はある場所で立ち止まった。
そこは、段ボールゴミを集め置いている倉庫だった。
俺は木の幹の影に隠れた。
柏崎がおもむろに、手に持っていた黒い布を広げた。
白い何かが、光る。
「なっ・・・・」
それは、奏の学生服だった。
柏崎は、目をこれでもかというくらい細めて笑う。
『大切なもの、簡単に手放したらダメだよ?桐生君。』
学生服から白い物体が剥ぎ取られ、空中を舞う。
それは、俺の足元に着地した。
俺は、目だけでその白い物体の正体を確認する。
それは、【桐生】と刻まれてあるネームプレートだった。
やはり、柏崎が持っていたのは奏の学生服だった。
俺は再度、柏崎を見た。
柏崎は、ニコニコしながらポケットから小瓶を取り出し、中身を学生服にブチ撒けた。
鼻を刺激する、オイルの臭い。
まさか、と俺は柏崎の元に駆け出した。
柏崎の微笑んだ目と視線が合う。
柏崎の唇が、動く。
『遅いですよ、先輩?』
柏崎が、俺に向かって空の小瓶を投げつける。
俺はそれを避けた。
小瓶が足元で割れる。
俺が小瓶に気を取られてる内に、
柏崎は、反対のポケットから取り出したマッチを擦り、学生服と一緒に倉庫へ放り投げた。
事前に灯油が撒かれていたのだろうか。
倉庫の中は、一瞬にして火の海となった。
俺はそのまま柏崎の横を通り過ぎる。
柏崎の顔が、珍しく崩れた。
『先輩?危ないですよ?』
「黙ってろっ!」
俺は止める柏崎の手を振り払い、
火の海へと飛び込んだ。
熱かった。
なんか痛かった。
でも俺は探し出さなきゃいけないんだ。
奏の、学生服を。
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