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誰に何て言われようと。
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俺が奏の学生服を見つけるのと、
柏崎が俺を倉庫から引き摺り出すのは、ほぼ同時だった。
はぁはぁ と2人で息を切らせる音が、
誰に気づかれることなく、響く。
あれだけの火事があったにもかかわらず、防火装置は発動しなかった。
この学校防災設備悪過ぎ、と、俺は呼吸を整えながら呟く。
俺は両腕でしっかり抱えた学生服を見つめる。
留め具が付いたままの状態だったので、上下とも揃っていた。
しかし、それはもう、着ることが出来ないほど焦げていた。
『先輩、無茶し過ぎですよ・・・』
柏崎が呆れたように俺を見つめる。
騒ぎの元凶が。
俺は柏崎に向かって拳を振り上げた。
しかし、柏崎はそれを素手で受け止め、そのまま自分の元に引き寄せた。
『先輩、殴りたいなら殴っていいですよ?
その代わり、僕がその10倍痛い思い、させてあげますから。』
"ここをね"と、柏崎が俺の胸を指差す。
俺は柏崎を振り払い、距離を図る。
「オマエ、何したか分かってんのか?」
はい、と微笑み、柏崎は側にあった雨水の溜まったバケツを倉庫に投げ入れる。
燃える物がなくなったことと、水がかかったことで、火の海はシューッと姿を消した。
『桐生君のこと、そんなに大切ですか?』
柏崎が、俺が大事そうに抱える学生服を見て言った。
俺は、まぁな、と言って立ち上がる。
さっきのでどこか火傷したらしく、
ヒリヒリとした痛みが伝わってくる。
俺は柏崎を見据える。
柏崎の顔は、普段通り微笑みを浮かべていた。
だが、眉が若干下がっている。
『先輩、桐生君のこと、好きなんですか?』
「オマエよりはな。」
俺の答えに、柏崎はクスクスと笑う。
俺は気味悪く思い、後退りをした。
コイツ、可笑しい、何かが。
俺はそのまま柏崎に背を向け、体育館へと走り出す。
しかし、言い忘れていたことを思い出し、足を止める。
柏崎、と呼ぶと、何ですか?、と柔和な声が返ってきた。
「柏崎、オマエは奏を"汚れてる"と言ったが、俺はそうは思わない。
たとえ奏の過去を知ったとしても、俺は絶対ェ、そう思わないから。」
柏崎は肩をくすめて、そうですか、
と呟く。
じゃあ、と俺は柏崎をその場に残し、再び走り出した。
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