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誰に何て言われようと。
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このまま、りっちゃんに会わずに姿を消してしまおう。
そう思って体を起こした時、
ガラガラッと、保健室の扉が開く音がした。
またサボりの生徒かな、と使ったベッドを直しながら考えた。
しかし、シュッ、シュッ、と擦るような独特な足音が聞こえて、ボクの体は硬直した。
柏崎八尋・・・
ボクはなるべく物音を立てないように、再び布団の中に体を埋めた。
柏崎が、ボクの居る場所のカーテンを、シュッと開いた。
『桐生君、寝てる?』
ボクは答えない。
答えるわけがない。
ボクは柏崎が気付くまで、寝たふりをしようと決め込み、布団の中で目を硬く閉じた。
体の震えがバレないように、祈りながら。
柏崎がどう思ったか分からないけど、彼はおもむろにボクの使っているベッドに座った。
『僕、君の制服、燃やしちゃった』
また、笑ってない笑顔で、言ったのだろう。
顔を見なくても、
楽しげな口調が、物語っていた。
やっぱり、あの火事の噂は、柏崎の仕業か。
本当のことを言うと、
制服が燃やされようが裂かれようが、ボクにはそんなに痛手は無いのだ。
なぜなら、ボクが父親に"欲しい"と言えば、数日後には届けてもらえるから。
ボクの父親は、ボクが義務教育を受けたことに出来ちゃうほど、詐欺的で病的な人だから。
でも、使える手段は余す事なく使うつもりだ。
"蛙の子は蛙だなぁ"と、しみじみ思う。
そっか、こういうところも、"汚れ"てるんだ。ボクは。
ボクは布団の中で、自虐的に微笑んだ。
柏崎に、バレないように。
柏崎は、ボクに制服についての報告をしてから、ずっと黙っていた。
ただベッドに座っているだけで、何も言わない。
静かな部屋に、ボクの心臓の音が響いてないか、不安になる。
やっと口を開いたかと思うと、
柏崎は、衝撃の言葉を、告げた。
『上村先輩って、良い人だよね。
君の制服取りに、あの火の海に飛び込んだんだから。』
ボクは弾け飛ぶように起き上がり、後ろから柏崎の首を絞めた。
「りっちゃんに何したの?
ねぇ、何したのっ」
起きてたんだ、と柏崎は呑気な声を出した。
ボクは、二度とそんなことを吐かせないよう、手に力を込めた。
柏崎は、呻き声ひとつ、あげない。
ただ、クスクス、と笑うだけだ。
このままコイツを殺して逃亡生活を送ることにしよう、
そう思った時、
再び、カーテンが開かれた。
"そこまで"と、
今、一番会いたくない人物が、
呆れた声を出しながら、ボクらに割って入ってきた。
?奏side? END
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