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誰に何て言われようと。
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?奏side?
ボクは、昔から"大人びた"子どもだった。
なぜなら、ボクが大人になるしかなかったから。
ボクの母は、世界を飛び回る仕事をしていた。
"世界を飛び回る"と言っても、
スチュワーデスとか、そういうのじゃなくて、世界の流行の最先端を追っかける仕事。
詳しくは教えてもらえなかったけど、だいたいそんな感じ。
だからボクの父は、仕事をしながらボクの世話をした。
仕事も家事も子育ても、父は頑張らねばならなかった。
それは、父にとっても母にとっても
ストレスだった。
それでも、両親は、ボクには当たらなかった。
それが、ボクにとっての"ストレス"だった。
2人はお互いに、仕事をしている姿に惹かれあった。
だから、互いに、相手がいつまでも仕事をし続けることを望んだ。
だから、ボクの、自分達の子供の存在にかなり驚いたらしい。
産むか産まないか悩んでるうちに、中絶出来ないくらい、ボクは育ってしまった。
そうしてボクは、誕生した。
ボクは、"手のかからない良い子"に育たなければならなかった。
それが、仕事をしたい両親の望みだったから。
ボクは自ら進んで家事の手伝いをした。
少しでも父が楽になれるように。
少しでも母が安心して留守にできるように。
そうやって過ごしているうちに、
ボクは保育園を卒園し、小学校に入学していった。
ボクは友達と遊ぶことはなかった。
家に帰ってやるべき事が、山のようにあったから。
ボクはそれに不満はなかった。
それがボクの"日常"だったから。
そんな時、母の仕事が一層忙しくなった。
母は、あまり家に帰ってこなくなった。
父は、いつも定時で帰宅した。
父は驚いた。
仕事をしている母に恋したというのに、母が仕事ばかりに気をかけて、自分を見てくれないことにイライラしたから。
そして、その行き場の無い愛情が、すべてボクに注がれた。
"甘え"という形で。
小学校低学年のうちは、ボクはその愛情に応えていた。
でも、3年生になってからは違った。
家のことだけじゃなく、他にもっとやりたいことがたくさんできた。
野球やサッカー、ピアノ、お習字。
同級生が一生懸命やっているようなことを、ボクはやりたかった。
ボクは、家事を疎かにしないことを条件にして父に直談判した。
父はあっさりOKした。
しかし、習い事を始めてまもなく、
父の暴走は始まった。
野球でボクがレギュラーになれないと、監督に怒鳴り込んだ。
ピアノ教室でボクが他の子より簡単な曲ばかり弾かされると、教室のピアノを叩き割りに来た。
お習字でもう少し上手く書けないのかと何回も書き直しさせられたら、
師範の先生を硯で何度も殴った。
"私の子を侮辱するな" と。
ボクは、習い事のすべてを自主的に辞めた。
これ以上続けたって、誰かが傷付くだけだから。
でも、ボクがやっているのは習い事だけじゃなかった。
ボクは、小学生、なのだから。
父の暴走時間は、ボクの放課後から登校中に変化した。
少しでもボクに何かがあると、
その度に父は学校に駆け込んで、
騒ぎを起こした。
ボクは常にビクビクしていた。
父が来ないだろうかと。
その迷惑さからくる恐怖は、
次第に諦めとなった。
ボクが父の尻拭いをしなければ。
ボクが父の分まで謝らなければ。
ボクが父の分までしっかりしなければ。
そうしてボクは、"大人びた"子どもとなった。
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