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誰に何て言われようと。
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冷めた子どもとキチガイの父親。
そんな変人一家に関わるほど、3年生は好奇心旺盛じゃない。
たとえ例外がいたとしても、彼らの親達が止めるだろう。
でも、そんな好奇と軽蔑の目に晒されるボクにも、理解者がいた。
それが、柏崎八尋。
彼は一学年上だったが、ボクと仲良くしてくれた。
休み時間、教室で1人ぽつんとしているボクを外に連れ出してくれたり、
父のことでからかわれて落ち込んでいる時に励ましてくれたり、
ボクにとって、無くてはならない存在だった。
彼も彼で、親には苦労してきたらしい。
両親の離婚が原因で、母方父方両方の親戚をたらい回しにされた挙句、
施設に入れられた、とのことだった。
辛い?と彼に訊くと、"今のほうが気持ち的に楽"と言っていた。
ボクは羨ましかった。
八尋くんの、その強さが。
だから、ボクは自主的に彼の後をついて回るようになった。
彼の帰る所である、施設に遊びに行くことも増えた。
外が真っ暗になるまで、ボクは八尋くんと遊んだ。
だから、ボクは疎かにした。
"父"を。
父は、八尋くんがボクを無理矢理連れ回していると言って、施設に怒鳴り込んだ。
ボクは、違う、と必死に説明したが、"奏は優しい子だなぁ"とか言って聞く耳を持たなかった。
"柏崎八尋を出せ"と暴れ回る父に、
施設の保母さん達は平謝り。
騒ぎ立てる子ども達を、父は下品な言葉で罵る。
"僕が柏崎です"と名乗り上げた八尋くんを、父は殴り飛ばす。
何度も、何度も。
パトカーのサイレンが響く。
警察に連行される父。
任意同行を求められる、ボクと八尋くんと保母長さん。
警察署にやって来る、八尋くんの親族。
"俺たちに迷惑かけるな"と、彼らに平手打ちを食らう八尋くん。
止めに入る警察官。
別の警察官の手を振り切り、八尋くんの親族に殴りかかる父。
ボクは、それをただ呆然と見ていた。
隣のイスに座り直す八尋くんが、
目を細めて笑って言った。
"いいから"と。
ボクはそれを、"心配しなくていいから"という意味だと思った。
間違いだった。
それは、"もう修正不可能だから謝らなくていいから"だった。
泥沼な示談交渉の結果、
両者引き分けとなり、
その後、保護者同士が会うことはなかった。
あとから聞いた話だけど、
この騒動の後、八尋くんは親族に施設から連れ戻されたらしい。
そして、騒動が学校中に広まりきった時、
ボクの最悪な学校生活が、幕を開けた。
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