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誰に何て言われようと。
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ボクは驚いた。
まさか、八尋くんがまたボクに話し掛けてくれるなんて思わなかったから。
ゴミ収集場所に、捨てられた教科書を拾いに来たボクは、
手に持った物を放り投げた。
ボクは堪らず彼に泣きついた。
"助けて"と。
彼は目を細めて笑った。
"いいよ"と。
そして彼は、
"条件を揃えに行こうか"と、ボクの手を引いて校舎を歩き出した。
スピーカーから流れる掃除の時間を意味するクラッシックと共に、軽やかに。
階段をグルグルと上り、4年生の教室棟へと。
彼は、ボクの教室の中に入った。
ボクも手を引かれながら続く。
机を元の位置に戻しているクラスメートの動きが止まり、顔面蒼白となった。
彼は教卓に両手をつき、言った。
"僕の友達と仲良くしてね?"、と。
笑顔で。
ドスのきいた声で。
そしてくるりと踵を返し、教室から出ていった。
再びボクの手を引いて。
八尋くんは、生徒の頂点に立っていたらしい。
この学校で、彼に歯向かえる生徒は、いなかったようだ。
だから、彼の発言には、相当の力があった。
のちに聞いた、話だけど。
八尋くんに手を引かれ、今度は階段をグルグルと下る。
教室棟から、特別教室棟への渡り廊下に差し掛かった時、ボクは感づいた。
彼は、職員室に向かっているのだと。
案の定、ボク等は職員室に到着した。
八尋くんが、"失礼します"と中に入る。
ボクも下を向いて、入る。
驚く教師達。
その中でも、担任は別段だった。
ボク等は担任の元にズンズンと進んでいく。
担任の短い悲鳴が、職員室に響く。
担任が"どうしたの?"と、上擦った声をかける。
八尋くんは、目を細めて笑って言った。
"教師が生徒をいじめたらダメですよ"と。
騒ぎ出す教師達。
発狂する担任。
目を細めて笑う、八尋くん。
ボクは、怖かった。
この、柏崎八尋という人物が。
ボクがしたくても出来なかったことを、何の躊躇も無く、笑顔で実行した、
この小学生が。
八尋くんは、騒然とする教師達を置いて、ボクの手を引き職員室から出た。
ボクは後ろから、"ありがとう"と言った。
顔を、引き攣らせながら。
すべてが完了したにもかかわらず、
八尋くんはボクの手を放さなかった。
それどころか、今までより強く握り締め、足も速めた。
ボクは前を歩く八尋くんに、
"どこに行くの?"、と尋ねた。
彼は目を細めて、
"最後の条件を揃えに"
と言った。
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