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たまには、な。
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それが数時間前に起きたこと。
俺は伸びをして、窓の外を見る。
もう、日は落ちきっていて、真っ暗だ。
腕時計で時刻を確認すると、
午後7時を軽く過ぎていた。
俺はパソコンからUSBを抜き、カバンを持って立ち上がった。
少しふらりとするが、柏崎の前で倒れるわけにはいかない。
『先輩、帰るんですか?』
「ああ。」
俺が短く答えると、"じゃあ僕も"と、柏崎も帰り支度を始める。
嫌な予感がした俺は、足早に部室のドアに向かった。
ドアノブを捻っても、開かない。
ハッ、として後ろを振り向くと、
柏崎が、指で部室の鍵をクルクル回していた。
「鍵、いつ掛けたんだよ?」
『先輩が執筆に夢中になっている隙に、ですよ。』
迂闊だった・・・。
コイツは危険人物なのに・・・
俺は無言で柏崎に手を差し出した。
柏崎は、理由が分かっているくせに、わざとらしく首を傾げる。
「鍵、開けたいんだけど?」
『僕が開けますよ。』
「俺は早く帰りたいんだ。」
『すみません、急ぎます。』
話が噛み合わない。
いや、わざと噛み合わなくしているのだ、柏崎は。
俺は仕方なく、柏崎を待つことにした。
鍵を奪い取ることも出来たが、コイツのペースに巻き込まれそうだったから、止めた。
程なくして、柏崎が小走りで駆け寄ってくる。
"お待たせしました"と、鍵穴に鍵を差し込むのを、俺は警戒しながら見つめた。
"ドアが開いたら、全力疾走をしよう"
そう考えていたら、柏崎が俺のカバンを鷲掴みした。
『先輩、途中まで一緒に帰りましょう?』
「嫌だ。
だから、この手、放せ。」
俺の言葉に柏崎が、
ギギギギギッと爪を立ててくる。
カバンに、無惨な引っ掻き傷が出来る。
『嫌です。』
「それ、爪立てる前に言えないの?」
柏崎は、あっ、と気付いたように声をあげ、
すみません、と眉を下げた。
どうやら、無意識の行為だったらしい。
俺は深くため息をつき、
"分かった"と力無く言った。
コイツに何かされたら、そのまま警察に引き摺り出せばいいか。
奏への仕打ち込みで。
『優しいですね、先輩って。』
「イヤミか?それ。」
柏崎はクスクス笑い、
"本心ですよ"と言う。
コイツの本心とは、一体どんなんなんだ。
透けて見せてもらいたいくらいだ。
柏崎の"開きました"と言う声を聞き、
俺はドアノブを捻った。
北風で冷えた空気が、俺達を刺した。
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