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たまには、な。
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俺達は校舎から出て、校門をくぐる。
さすが12月、もう冬だ。
俺は自分の腕を摩る。
コート、持ってくればよかったな。
朝、奏が"今夜は冷えるって"と心配そうに見つめてきたのを思い出す。
ちゃんと話を聞いてやればよかった、と、今更ながら後悔する。
『僕といるのに、他の人のことなんて考えないでくださいよ。』
「はぁ?」
隣に並ぶ柏崎が、目を細めたまま、拗ねたように口を尖らせる。
そんなこと俺の勝手だろ、と吐き捨てると、
難しい問題ですね、と返ってくる。
どこまで行けば、この不毛な会話から解放されるのだろうか。
柏崎も電車通学らしく、少なくとも駅までは離れられないだろう。
俺達は、電灯で照らされた歩道を、延々と歩く。
そういえば、と柏崎が思い出したように声を発する。
『さっき、クリスマスがどうとか言ってましたけど、何だったんですか?』
「あれは・・・」
あれは、部誌に載せる作品の題材だ。
"12月と言ったらクリスマスだろう"
そんな安易な考えで書き始めた。
しかし、よくよく考えると、
なんで"クリスマス"で騒がしくなるか、分からなかったのだ。
まぁ、俺だってガキの頃は、サンタだプレゼントだと浮かれた。
だが、もうそんな年じゃない。
色々な事実も、知ったし。
にもかかわらず、
俺と同世代、俺より年上の人達は依然としてクリスマスを楽しみにしている。
なぜだ?
『先輩らしいですね。』
俺の話を聞いた柏崎は、クスクスと笑い出した。
コイツの笑いを、これほど失礼に思ったことはない。
じとっと睨むと、"すみません"と柏崎が口元を歪ませながら言った。
笑いながら謝られても、全然嬉しくない。
『でも、なんだか分かります。
クリスマスって、元々キリストの誕生祭ですよ?
教会でお祈りしたりして、本来は厳かなイベントですよ?
それなのに、街も人も浮かれちゃって。
ことあるごとにイチャイチャイチャイチャと・・・。
やめて欲しいですよね、そういうの。』
柏崎が、饒舌になる。
細められた目は、全く笑っていない。
俺は柏崎を何とも言い表し難い表情で見つめながら、
"そうか"と内心、納得した。
カップルか。
だからピンクな雰囲気が飛び交っていたのか。
俺には全く縁の無いことだったので
、すっかり忘れていた。
未だにつらつらと文句を言っている柏崎を見ながら、口を開いた。
「柏崎、それ、僻みっぽいぞ?」
『はい。僻みですよ?
何か問題、ありますか?』
間髪いれずに返事をした柏崎に
俺は、"いや・・・"としか答えられなかった。
入試説明会の一件以来、
柏崎は自分の本性を惜しむこと無く出すようになった。
と、言っても、俺の前でだけなのだが。
それについて言及したら、
"元々隠してません"
"皆が勝手にイメージを作ってるだけです"
と、さらっと毒を吐いた。
まぁ、出しても出さなくても、
互いの扱い方は変わらないが。
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