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たまには、な。
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僻み事を言い続けていた柏崎の口が、ニタァーッと歪む。
『だから僕、今回、クリスマスを血の色に染めることにしたんですよ。
駅前にある巨大なツリーに、毎晩、死体を一体一体吊るし上げて・・・
翌朝、恋人の無惨な姿に発狂したり
して・・・』
ふふふふふ、と不気味に笑う柏崎を、俺は呆れを含んだ目で見つめた。
多分、部誌に載せる作品の話だ。
カップルへの僻みを、作品にぶち込んだんだろう。
現実だったら、確実にブタ箱行きだが、小説の中でなら罰せられない。
もしこれが罪になるなら、ミステリー小説家は皆、犯罪者だ。
だが。
「オマエなら、やりかねないよな・・・」
『そうですね。』
あっさりと肯定されてしまった俺は、言葉に詰まる。
柏崎は笑うだけで、何も言わない。
2人分の靴音が、妙に響く。
そうだ、と、柏崎が明るい声を発する。
俺は気だるげに"なんだよ"と返す。
『フリー同士、一緒に過ごしません?
クリスマス。』
「嫌だ。
つーか、無理。
フリーじゃないし。」
キッパリと言い放つ俺に、柏崎は、"残念です"と、残念そうには到底感じられないほどニッコリ笑って言った。
俺は"そーかよ"と面倒臭げにし、
口を硬く閉じた。
柏崎も、もう話題が無くなったからか、目を細めたまま、黙って前を歩く。
俺が言った"フリーじゃない"とは、
世が言い表すものとは意味が違う。
"暇じゃない"と言う、本来の意味だ。
俺はクリスマスは毎年、雪里と過ごしていた。
特別に何かをするわけではなく、
勉強したり二次元を語ったりして、
普通に一晩過ごしている。
そういえば、今年は奏もいるな。
奏はあまり交友関係が広くない、
というより、俺と雪里くらいしか友達がいない。
近所のおばさん達とも仲は良いが、
イベント時は、それぞれの家庭で過ごすだろう。
必然的に、奏は俺達と過ごすことになる。
誘ってみるか。
いや、奏のことだから、俺と2人がいいと言うだろう。
雪里には悪いが、今年は諦めてもらうか。
いや、雪里も雪里で、断ると面倒臭そうだ。
また奏と取っ組み合いのケンカになんてなったら、もっと面倒だ。
「どうすっかなぁ・・・」
『悩むなら、僕にすればいいじゃないですか。』
クスリと笑う柏崎に、
俺は、"それは無い"とハッキリ告げた。
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