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たまには、な。
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モヤモヤを残す中、俺は電車に揺られ、駅から自宅までの帰路を歩いた。
玄関のドアを開けると、暖かい空気と鼻をくすぐる美味しそうな香りが、俺を迎えた。
そして、柔らかな奏の笑顔が。
『りっちゃん!見て見てっ!
小ちゃいクリスマスツリー♪
手乗りサイズでね、すっごく可愛くてつい買っちゃった?』
ほら、とツリーを手のひらに乗せてはしゃぐ奏に、俺は ふっ、と微笑んだ。
俺の反応を見て、頭にハテナを浮かべる奏に、俺は再度笑みを浮かべる。
「いや、
我が家に帰って来たなぁ、と思って。」
『えっ!
え、あ、えっと・・・////』
俺の言葉に、奏は顔を赤くし、目を泳がせる。
俺はそんな奏の頭に手を乗せ、
"ただいま"と言って靴を脱ぐ。
"おかえり"という奏の言葉をバックに、俺は2階へ上がる。
部屋のドアを閉め、ズルズルと崩れ落ちる。
言えない。
今まで柏崎と一緒に居たなんて。
しかも、成り行き上仕方ないとはいえ、2人で駅まで行き、
そこで寸止めキスをされたなんて、
「言えない・・・」
言ったら絶対泣く。
いや、泣くだけならまだいい。
怒って柏崎を襲撃するかもしれない。
いや、俺が刺されるかも。
俺は暗い部屋の中で、頭を抱えた。
自分の迂闊さを呪って。
危険人物だとは分かってる。
でも、アイツを狂わせている何かを取り除いてやれば、
アイツは普通になれるんじゃないかと、思ってしまう。
そして、お節介かもしれないが、
奏と柏崎が元の関係に、友達同士に戻って欲しいと、願ってしまう。
この考えは、奏への裏切り行為になってしまいかも、しれないのに。
俺はいつから、こんな偽善者になってしまったのだろう・・・
"ご飯?お風呂?"と、奏がドアの外で尋ねてくる。
俺は腹を押さえ、ちょっと考えてから、ドアを開けた。
「飯。」
『分かった♪』
にっこり笑う奏の頬を、軽く摘まむ。
もちっとした感触が、伝わってくる。
奏は、どうしたの、とばかりに頬の指に手を重ねてくる。
俺は、なんでもない、と呟き、奏の横を通り過ぎ、階段を下る。
"奏が笑ってるなら、いいか"
と、密かに微笑みながら。
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