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たまには、な。
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オレは、律を解放してやった。
律は、"まったく"というように、オレをジロリと睨む。
この表情が、いいカンジに可愛いんだよなぁ?・・・
まぁ、そう感じるのは、オレだけだろうけど。
「で、24日空いちゃったけど、
どーすんの?
奏チャンと家でのんびり?」
オレは、羨ましい半分、不満半分で
だらぁ?っとした声で訊いた。
"そうだな"、という答えを期待して。
でも、律は目線をオレから窓の外に移し、少し悩ましげな声をあげた。
『いや、俺の予定に合わせてもらう。』
「あれ?
予定、出来たの?」
オレの問いに、律は"まぁな"と呟いた。
何なのだろうと思い、はっきりしない律の体を揺すった。
"教えろ?"と。
ふざけた声で。
律は、ふっ、と笑って口を開いた。
『墓参り。母さんの。』
「あ・・・」
体中の力が一気に抜けた。
律の肩にあった腕も、するりと外れていった。
そうだった・・・
24日は、静さんの・・・
律の母親の・・・命日・・・。
あからさまに落ち込むオレに、
律は、"気にするな"という風に微笑んだ。
「今年で、何年だっけ・・・」
『6年。』
「そう・・・だったな・・・」
静さんは、とても明るい人だった。
体が弱くて、青白い顔で病院のベッドに居たけど。
でも、律やオレが会いに行くと、
"いらっしゃい、ガキンチョ"、と、
ニカっと笑って迎えてくれた。
この人なら、病気にも負けない。
そう、どこかで感じてた。
でも、すっと、眠るように逝ってしまった。
雪の降る、クリスマスイブの日に。
あの日が初めてだった。
オレが律の泣き顔を、見たのは。
オレは、横で泣き崩れる律を見て、
誓った。
律は、オレが守るんだ、と。
オレが律とクリスマスを2人で過ごし始めたきっかけ。
静さんの命日の次の日、
律が出来るだけ笑っていて欲しかったから。
いつの間にか、忘れてしまっていたけど。
視界がボヤける中、オレは律をキツく抱き締めた。
"なんだよ"という律の面倒臭げな声が聞こえる。
でも、オレは力を緩めなかった。
後で殴られても蹴られても罵倒されてもいい。
今、抱き締めないと律が消えちゃう、
そう思った。
「バイト終わったら、墓参り行くから・・・」
『無理すんな。
来たいなら、別の日にしろ。』
"雪里の無駄に元気な顔のが、母さんは喜ぶだろ"、という言葉を、律がどんな顔して言ったか分からない。
でも、きっと悲しい顔はしてない。
それが、律だから。
辛い時にこそ笑う、静さんの、
優しい、息子だから。
?雪里side? END
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