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たまには、な。
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数々の墓石を通り過ぎる。
墓場の中でも1番奥に、母さんは眠っている。
俺は時々後ろを振り返り、奏がついてきているかを確認する。
奏は、不安そうにキョロキョロ周りを見ている。
まだ午前中ではあったが、
オカルトやホラーが苦手な奏には、
並ぶ墓石と流れ聴こえるお経は苦痛らしい。
自分でも不謹慎だとは思っているらしく、俺の側に駆け寄ってくるなり、"ごめんなさい"と呟く。
俺は、"仕方ないだろ"と苦笑する。
「申し訳なく思ってるだけ、
奏は偉いと思うけど?」
『でも・・・』
「でも、じゃない。
大丈夫だって。
あ、着いた。」
俺は母さんの墓を指差した。
"墓はなるべく質素に"という母の要望通り、何の主張もしない、墓。
彼岸の時に掃除しに来たので、あまり汚れてはいなかった。
ただ花生けには、彼岸には無かった生花が一本、活けてあった。
『ひまわり・・・?』
「ああ。
母さんの知り合いだかが、毎年活けてくれてるんだ。」
ひまわりは、母が好きなもう一つの花だ。
一種の憧れだったのかもしれない。
太陽に向かって元気に成長していく、この花は。
あまり外には出ることが出来なかった、自分を思い。
それを知っていたか知らないか、
毎年1本、俺が墓参りに来る前にひまわりが活けてある。
『ひまわりの人、りっちゃんのお母さんのこと、好きだったのかな?』
「えっ?」
『ひまわりの花言葉は、"敬愛"。
きっと、りっちゃんのお母さん、ひまわりの人と仲良かったんだよ。』
「そう・・・かもな。」
俺は、花生けを墓石から抜き、
奏に花束とセットで渡し、
墓全体を軽く水洗いをする。
そして、奏から返してもらった花を、
黄を囲うように紅を活ける。
センスが無いのは、仕方ない。
毎年、そうやってるんだ。
仕方が無い。
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