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たまには、な。
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俺は、線香の束にライターで火をつける。
あの独特な香りが、鼻の周りを漂う。
線香の束を半分に分け、奏に手渡す。
奏は一度頭を縦に振り、俺から線香を受け取った。
交互に供え、目を伏せて手を合わせる。
北風が一迅、吹き抜ける。
すっ、と目を開け、隣の奏を振り返る。
何かを願うように、目を閉じていた。
俺の視線に気付いたのか、パッチリ目を開けて、はにかんだ。
"願い事か?"と訊くと、"うん"という、優しげな返事が返ってきた。
俺はふっ、と微笑み、墓の前にしゃがみ込む。
奏のびっくりした表情が、ちらりと見える。
俺は、すぅ、と深呼吸をし、墓石に向かって話しかけた。
「母さん、久しぶり。
さっそくだけど、謝ります。
すみませんでした。」
俺の言葉に、奏が目を丸くする。
しかし、親子水入らずの会話を邪魔しないようにか、黙ってこちらを見ている。
しかし、次の一言で、その沈黙は破られた。
「俺は、隣にいる白いのに、
貞操を奪われました。」
俺はキッパリはっきり言い放った。
一瞬の、ほんの数秒の間が、空く。
『りりりりりっちゃぁん??
え?あ、え?えぇ?』
奏が、恥ずかしそうに周りを見渡し、俺の体を揺する。
グラグラと揺れる視界の中、俺は冷静に続ける。
「殴られて押し倒されて、べろチューまでされてしまいました。
それ以上のことも、されました。
すべてが初めての体験でした。」
奏が"もう止めて"とばかりに赤い顔で、熱い手で、俺の口を塞ぐ。
しかし、それを強引に外し、さらに続けた。
「だけど、後悔はありません。
俺が望んだことだから。」
『そ、それはボクの家出を止めるためでしょ?///
ボクがそうさせただけでっ』
「違う。」
俺の肩を掴み、自分の方に向かせる奏に、俺は否定の言葉を断言した。
奏の瞳に、睨みとはまた違った意味で眉間にシワを寄せる自分が、映っていた。
俺の真剣な表情に臆したのか、
奏が肩から手を放し、数歩後ずさりをする。
俺は、再び墓石を正面に、語りかけた。
「本当に、俺が望んだことなんだ。
奏は何も悪くない。
むしろ、俺の方が、罪は重い。」
"何言ってるの?"と、上ずった声を発する奏に、俺は目を伏せる、答える。
"奏の過去を利用したから"
と。
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