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たまには、な。
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主任らしき女が、"ラストです"、と震えた声でテーブルに近付いてくる。
俺は、シュークリームを頬張っている奏に代わって皿を受け取る。
35品目は、
真っ赤な苺が乗ったショートケーキだった。
「シンプル且つ、なかなか重い。」
『ボクにとっては、軽いよ♪』
奏は、ひょいっと俺の手から皿を受け取り、フォークを刺す。
ん?、と幸せを噛みしめる奏を、俺は微笑みながら見つめる。
俺の視線に気付いた奏が、ケーキが刺さったフォークを俺に突き出す。
『りっちゃん、あ?んっ!』
"な?んてね"と、引っ込めそうになる腕を、俺はがっしり掴んだ。
動揺する奏をよそに、俺はフォークを口に含む。
生クリームの甘さと、苺の酸味が絶妙だった。
「甘い。」
『け、ケーキだし、当たり前だよっ!///』
"そりゃそうだな"、とククッと笑う俺に、奏が赤い顔で膨れる。
最近分かったことだが、奏は不意打ちの行動には対処出来ないらしい。
以前は、奏のほうが優位な立場だったが、今ではもう、立場が逆転し始めてる。
正直、俺はその状況を楽しんでる。
本人には、絶対言わないけど。
奏がラストの皿を塔の頂上に置いたのを確認し、
俺は頬杖する手を替えた。
「で、次はどこに行くんだ?」
『ん?・・・
ゲームセンター、行ってみたい!』
ウキウキと身を乗り出す奏の額を、俺は指で押す。
"痛い"と呟く奏を軽く無視し、
俺は視線を自分の隣のイスへ移す。
イスの上には、今日買った物の袋がズラリと積んである。
その中に、四角い箱が入ったものがある。
奏への、クリスマスプレゼント。
さっきのショッピングモール内の雑貨屋で買った。
日頃の感謝と、昨日のお礼を込めて。
奏の趣味とか、一緒に生活してたらなんとなくは分かった。
だが、イマイチ自信は無い。
奏のことだから、
"りっちゃんがくれた物なら"と、喜んでくれはするだろう。
なんたって、防犯ブザー一つで嬉し泣きした奴だ。
だが、それじゃダメなんだ。
奏が、心から欲しいと願った物じゃなきゃ。
決めて買ってしまったのだから、あとはもう渡すしかない。
分かってる。
でも、
「タイミング、分かんないんだよな・・・」
『えっ?』
俺の独り言に、不安そうに首を傾げる奏に、俺は"何でもない"と告げる。
本当は、このカフェに入ったら渡すつもりだった。
2人で座って、落ち着いた状態で渡したかった。
しかし、全品制覇にチャレンジし始めて、それどころじゃなかった。
特に、奏が。
それに、あんな"至福の時間"オーラを出されたら、
水を差すようなこと、出来ない。
次、ゲーセンじゃ、ゆっくり渡したり出来ないな・・・
出そうになる溜息を抑え、
俺は奏をちらりと見る。
奏は、何やらブツブツ言っている。
「ゲーセン、近くにあるから。
大丈夫だ。」
『え?
りっちゃん、嫌なんじゃないの?』
キョトンとする奏に、俺は"悪ィ"と謝る。
さっきの独り言って、
"行きたくない"って受け取れたりするのか・・・
俺は奏の頭に手を乗せる。
奏は、自主的に頭を動かしてきた。
『なんか、撫でられてるみたいで好き・・・』
「普段から撫でろ、って催促か?」
意地悪く言ってやると、奏は慌てて"違う"と連呼する。
俺は、"わかってるって"と笑い、
隣のイスから荷物を持ち上げる。
「そろそろ動かないと、太る。」
『りっちゃんは、もう少し太りなさい。』
"オマエもな"と笑い合いながら、
俺達はカフェから出た。
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