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たまには、な。
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それから俺達は、“りっちゃん4?6号”、"小りっちゃん9?15号"を手に入れた。
奏が"取り過ぎちゃったかな?"と眉をハの字にする。
その手元で、“りっちゃん“と"小りっちゃん”がカウンターで貰ったビニール袋に押し込められる。
“りっちゃん”だぞ?それ。
いや別に気にはしないが・・・。
俺は微妙な気持ちを胸に、腕時計を見る。
時刻は、午後6時。
幸い、さっきのカフェで甘いものを食べたから、腹は減ってはいない。
それは奏も同じらしく、晩ご飯の"ば"の字も出ない。
だけど、さすがにゲーセンも飽きてきた。
俺達は、ゲーセンの端から端までをやり尽くした。
あるコーナーを除いて。
『りっちゃん・・・』
奏が俺の手を掴み、恐る恐る声を掛けてくる。
"やりたい"と、目が語っていた。
俺は一度目を閉じ、息を吐いた。
そして放れかけた奏の手を掴み直し、あのコーナーへと足を運んだ。
キーの高い音声と、盛りに盛った女の子のポスターが俺達を迎える。
「久しぶりだな・・・
プリクラなんて。」
『やっぱり、イヤ?』
泣きそうな顔をする奏の額を、俺はパチンと打つ。
痛がる奏を引き摺るように、俺は近くの箱ん中に入っていく。
白の照明が、俺達を包み込む。
「奏、やったことあんの?」
『無いよ?りっちゃんとが初めて。』
"りっちゃんは?"と尋ねる奏に、
俺は目を逸らす。
その途端に、奏がじとっとした目を向けてくる。
『長谷川さん、か。』
「まぁ、な。」
中学の時、よく部活帰りに雪里と撮った。
特に何の記念もないのに。
あの頃の俺、雪里と同格くらいバカやってたな・・・
若気の至り、だな。
しみじみと思い出に浸り出す俺を、
奏がムスッとした顔で見つめる。
俺は咳払いをし、財布から100円玉を4枚出し、プリ機に投入した。
明るい音声と画面が、俺達に選択を迫る。
「適当に俺が決めていいか?」
『慣れてるりっちゃんにお任せします。』
ぷいっとそっぽを向く奏。
完全に不貞腐れてる。
俺は、"わかった"と告げ、指で画面をタッチしていく。
せっかく撮るのだから、笑顔にしてやりたいんだけどな。
そんなことを考えている内に、撮影が始まった。
俺は、無難にピースをする。
奏は、直立不動。
機嫌の良し悪しじゃ、ない。
「奏、緊張し過ぎ。」
『そ、そう言われても・・・』
一枚、また一枚と写真が撮られていく。
ピースと直立不動のプリクラ。
記念どころか、思い出にもなりゃしない。
俺から、はぁ、というため息が零れる。
気まずそうな目が、こちらを向いている。
俺はカメラから目を離すことなく、
奏に告げる。
「あとで文句、聞くから。」
え?、と短く声をあげる奏の肩に、
俺は腕を回す。
ピタッと、互いの体がくっついた。
そして、シャッター音が響くなか、
視界が、一気にブレた。
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