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たまには、な。
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グラッと体が傾く。
"奏に突き飛ばされた"
それに対するショックより、
バランスが崩れたことで、俺にすっぽり嵌まりながら一緒倒れる奏の頭のほうが、俺は心配だった。
俺はとっさに、奏の後頭部を手で覆う。
ドンッという音と共に、左手に痛みが走る。
俺は痛みで一瞬眉を寄せるが、奏を不安にさせないよう、すぐに戻した。
"大丈夫か?"と訊くと、"なんとか"と返ってきた。
頭は、打っていないようだ。
安堵からか、体から力が抜ける。
悪い、という感情とは裏腹に、
奏の体に俺の体重が掛かる。
押し倒し、というより、押し潰してるような感覚だ。
俺は奏の耳元で、"悪ィ"と呟く。
奏は、動揺したように唇を震わせながら"大丈夫"と返してきた。
俺は顔だけ上げ、奏を見下ろした。
口を半開きにし、耳まで赤くなった奏と、目が合う。
潤んだ瞳と紅潮した頬。
体から伝わる速まった鼓動。
"りっちゃん"と、恥じらいと妖艶さを兼ね備えた声。
俺の手が、熱くなった奏の頬に触れる。
奏は、びくっ、と体を震わせ、目をギュッと閉じる。
俺は、ふっ、と笑い、
一呼吸置いてから、包み触れていた頬を軽くつねった。
"みっ?"という、何かの鳴き声みたいな声が漏れた。
肩を小刻みに震わせながら、俺は奏の上から退く。
笑い出す俺に、奏はあからさまに不機嫌な声を出した。
『りっちゃんのバカッ!
思わせぶりっ!
すけこましっ!』
バシバシと、奏は俺を叩く。
俺はその両手を掴み、制止する。
「ごめんな。
ちょっと面白かったから。つい。」
『人の純情を弄ばないでよっ!』
"今度絶対、仕返ししてやる!"と叫ぶ奏を、"はいはい"とたしなめながら立ち上がる。
そして、奏に手を差し出す。
ブツブツ文句を言いながらも手をとる奏を一気に引き上げる。
俺達はプリ機の外で、プリクラが出来上がるのを待った。
落書きとかしてないから、多分、
ピースと直立不動の酷いモノだろう。
ペラりと出てきたそれを、俺は一瞥した。
そして、俺から離れた位置で柱にもたれかかる奏に手渡した。
『りっちゃん・・・』
「何?」
プリクラから顔を上げずに名を呼ぶ奏に、俺は素っ気なく返事する。
奏は何やらモジモジしながら、
"あの"とか、"えっと"とか呟く。
俺は、ふっ、と息を吐き、"気にしてないから"と告げ、奏の手を引きカウンターへ歩く。
『突き飛ばして、ごめんなさい。
思い出を、ありがとう。』
「だから、気にしてないっての。」
しつこいぞ、と眉をひそめて振り返る。
奏は右手でプリクラをひらひらさせながら、"りっちゃんのせいだもん"
と小悪魔な笑いを浮かべた。
俺は、"煩い"と呟き、また前を向いた。
本日当店1番のベストショットであろう、
奏と俺のツーショットと同じ、
ちょっと気恥ずかしげな顔を浮かべながら。
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