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たまには、な。
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一通り笑い終わり、
俺達は礼拝堂の扉を開けた。
奏は一度振り返り、キリストへ祈りを捧げる。
俺はそんな奏を見ながら、
"どうするかな"と心中で呟いた。
色違いとはいえ、奏とプレゼントが被ってしまった。
奏は"ペアルックみたい?"と喜んでい
たが、俺は納得いかなかった。
ペアルックと言われるのがじゃない。
勿論、奏のプレゼントに不満があるわけじゃない。
マグカップは実用的だし、貰った物にケチ付けられるほど俺はエラくない。
問題なのは、俺が渡したプレゼントだ。
"奏が本心から喜ぶ物"
その条件はクリアした。
多分。
しかし、何だかオリジナリティが無い。
マグカップなんてありきたりな物なのだから、無くて当然だろうが、
それでもなんだか納得いかない。
「どうすっかな・・・」
『何が?』
漏れた独り言に、奏がキョトンとした目で見つめてくる。
"なんでもない"と答えながら、
俺は奏の顔を凝視する。
奏が喜びそうな物で、
すぐに用意できて、
俺にしか出来ないこと・・・
「奏ってさ・・・」
『ん?何?りっちゃん。』
言葉を途中で止める俺に、奏が焦れったい気持ちを押し隠すように首を傾げる。
その可愛らしい仕草に、俺はピンときた。
「奏、ちょっと来い。」
『えっ?』
驚く奏の手を強引に掴み、俺は礼拝堂から出る。
入る時に通ってきた道を引き返すではなく、
教会の周りをグルっと回るように足を動かしていく。
戸惑う奏に、"賭けだから"と呟きながら。
ホント、賭けなんだ。
奏が喜ぶか分からない。
俺にしか出来ないわけじゃない。
あるかどうかも分からない。
でも、
今夜、
この瞬間、
クリスマスプレゼントとして出来るのは、俺だけだ。
もうすぐで一周してしまう。
諦め掛けたその時、俺は賭けに勝った。
「見事な枯れっぷりだな。」
見つかったことへの歓喜を隠すために、俺は悪態をついてみる。
奏は目を丸くしながら、それを見上げながら呟いた。
『ヤドリギ・・・?』
「そう。」
素っ気なく返す俺に、奏はハテナを浮かべながら振り返る。
俺は一瞬目を逸らし、もう一度"ヤドリギだよ"と呟いた。
"りっちゃん?"という、何の予想も出来ていないような声がかかる。
俺は意を決し、ヤドリギの下に立つ奏を真っ直ぐ見据えた。
「奏。
ヤドリギの下、動くなよ?」
『えっ?』
芽をまん丸くしてたたずむ奏の肩に両手を乗せ、
俺は少し屈んだ。
そして、何度弾いたか分からない奏の額に、軽く唇を当てる。
すっ、と体を離し、
俺は奏の顔を見ることなく歩き出す。
ややあってから、放心状態から抜け出した奏が追い掛けてくる。
『り、りっちゃん?///
今のはどういう・・・』
奏は、真っ赤になりながら俺のコートを掴む。
俺はなるべく平静を装い、しれっとした態度を作る。
「ヤドリギの下って、そういうことしていいんじゃなかったっけ?」
"そうじゃなくて!"と叫ぶ奏に、俺はチョップをかます。
痛がる奏の額を指で突き、
ふっ、と微笑みながら呟いた。
「たまには、な。」
赤くなったり白くなったりしながら叫ぶ奏の首根っこを掴み、
"寒いし腹減ったから帰るぞ"と、
ズルズルと引き摺っていく。
必死に照れを、隠しながら。
クリスマスプレゼントに、デコチューなど、俺もキザなことを考えたな。
でも、まぁ、
イベントの魔法ってことで。
"たまには、な"
たまには、こういうのも良いかもしれないな。
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