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悪いかよ。
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日にちはあっと言う間に過ぎ、
もう晦日になってしまった。
年末恒例の行事と言えば、
やはり大掃除だ。
去年までは、立ち退きかよ、と突っ込まれてもおかしくないような大規模なものをしていた。
何てったって、腐海の城だから。
あんなんじゃ気持ち悪くて新年迎えられない。
しかし、今年は奏がいた。
普段から家の清潔さを保ってくれていたから、一般的な大掃除をすることが出来ている。
『奏チャ?ン!
換気扇の掃除、完了だよぉ!』
『じゃあ、そこ置いといて。
次、窓拭きね!』
"ほ?い"と返事しながら、雪里が奏から雑巾代わりのタオルを受け取る。
バタバタと走るのを、怒られながら。
俺はそれを、要らないハガキやらチラシやらの束を纏めながら傍観していた。
普段から掃除していたからと言って、奏は手抜きな大掃除はしないらしく、人手を欲しがっていた。
そこで、奏の年越し蕎麦とお節を食べたがっていた雪里に相談した。
"泊り込みなら"という新たな条件は付いたが、上手く丸め込めた。
そして、予想以上にハードな奏のシゴキに雪里は、"そりゃないよ?"と応え続けている。
去年までは、苦痛でしかなかったこの時間。
それが、メンバーが違うだけで、こんなにも楽しい気持ちになれるなんて、凄いことだ。
『りっちゃん、こっちの束もお願いっ!』
「はいよ。」
奏が持ってきた大量の紙束を受け取る。
それはすべて、便箋だった。
これが何なのか尋ねると、奏は苦笑いをしながら答えた。
"ボク宛のファンレターだよ"と。
どこから聞いたのか、雪里が"マジで?"と駆け寄ってくる。
俺から紙束を奪い、ふむふむ、と興味深々に眺め始める。
『え?っと、
"いつも奏さんを見ています"、
"君はオレのエンジェル!"
"抱きしめたい子No.1"
・・・男から?』
雪里の問いに、奏が迷惑そうに頷く。
雪里は微妙な顔で、紙束を俺に返してくる。
返された紙を、一枚一枚確認していく。
女の子からのもあるが、束の大半が男から。
可愛らしいデザインの物から、
ルーズリーフに殴り書きしたようなもまで、様々だ。
ファンレターと言うより、ラブレターに近い。
「捨てていいのか?」
奏はこっくりと頷く。
"気持ちに応えられないなら、捨ててと言われたから"と。
俺は"そうか"と呟き、紙束を凝視した。
ラブレターって、資源ごみで出してもいいんだろうか?
たしか、ラブレターとかも神社でお祓い出来たような気がする。
やらずに捨てて、いいのだろうか?
紙束を片手にフリーズした俺の頭に、雪里が体重を掛けてくる。
『な?に考えてんのさぁ?』
「いや・・・
怨念はゴミじゃないよな、って。」
はぁ?、と雪里が訳が理解出来ないような声を上げる。
その声に、奏が"何?何?"と寄ってくる。
俺が説明しようと口を開いた直後、
インターホンが鳴り響いた。
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