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悪いかよ。
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痛みと戦いながら、親父が雪里に平謝りをする。
"大丈夫です"と答える雪里は、涙目だ。
オロオロと挙動不審になる奏に、俺は"大丈夫だから落ち着け"と告げる。
"でも"と口ごもる奏の頭をワンタッチし、テーブルに湯呑みを置きながら嫌みったらしく口を開いた。
「で?
サプライズで帰ってきて、ピンポンダッシュしたご感想は?」
『驚きの連続だったね。
特に奏くん。
こんな可愛い子だとは知らなかったよ。』
親父はじっと奏を見つめ、"さっきはごめんね?"と頭を下げる。
奏はそれを慌てて上げさせ、"気にしてませんよ"と微笑んだ。
親父はそれを見て、"良い子だぁ"と涙を浮かべる。
甘やかすなよ・・・
付け上がるともっと面倒なんだから・・・。
俺は親父の髪を雑に掴み、ソファへ吹っ飛ばす。
またバカ2人の頭がぶつかった。
数分前に見た光景を、憐れな目で見つめながら、俺はあることを考えていた。
親父はほとんど荷物を持っていない。
身一つで来たと言ってもおかしくないくらい、身軽過ぎだ。
俺の疑念のこもった目線に気が付いたらしく、親父が"何かな?"と首を傾げる。
「親父、ちゃんと休暇取って来たのか?」
『取って来たに決まってるだろっ!
父さん、そこはちゃんとしてるぞ!』
"失礼しちゃう"とばかりに膨れる親父に、"そうかよ"と返事をする。
疑念の目は残したままで。
親父の隣の雪里が、"いつまで居るんですか?"と、目を輝かせる。
昔から、雪里は親父が好きだった。
ノリと言うか、テンションと言うか、何かしらの波長が合うみたいだ。
俺としては、2人揃って横でバカやられるのは、大変迷惑なのだが。
そんなバカ一号の質問に、
バカ二号の親父は、指を三本立てて、ドヤ顏をした。
『正月の三日間、休暇取ってきたんだ。』
『み、三日間・・・ですか?』
親父の信者もどきの雪里も、さすがに"アレ"を思い出し、笑みを引きつらせた。
それに対し親父が、"どうした?"と頭にハテナを浮かべる。
奏が遠慮がちに俺の服の裾を摘む。
奏も、気が付いたようだ。
俺は深く長い溜息ののち、
皆を代表して、口を開いた。
「親父、今日、30日なんだけど。」
『・・・え?』
開いた窓から冷たい風が吹き抜ける。
俺はすくっ、と立ち上がり、石化したように固まる親父の肩を叩く。
「残念だったな。」
俺は悲しげな顔と落ちた声で語りかける。
今にも吹き出してしまいそうなのを
我慢しながら。
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