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現状4
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部屋は薄暗く、天井からライトが水槽を照らしていた。
そこで男と初めて会ったのだ。
「お前が喋ることが出来たら良かったのだが……。 喋ることが出来ないのか、それとも喋りたくないのかな?」
俺が昔の事を思い出していると、男は薄く笑いながら話しかけてきた。
本当は喋ることが出来る。
しかし話したくなかったのだ。
だからいつも男の言葉には答えなかった。
男は自分に関する事は何も話さない。
いつも俺を綺麗だ、宝石みたいだ、ずっと閉じこめておきたい、などの言葉を言いながらも少し悲しそうな顔をする。
じっと様子を見られるのも初めは気持ちが悪く、隅で体を小さくしていたがもう諦めた。
特に俺に触れてくるつもりもないらしい。
噂で聞いた事があるが、生きている人魚に触ったり触られたりすると、少しずつ泡になって消えてしまうと信じられているようだ。
そのため捕獲するときはまず先に銃で殺してしまう。
そして、死んでしまえば接触しても関係ないという都合の良い話だ。
昔はそういう能力のある人魚がいたのだろうか?
俺は聞いたことは無いが、その昔から伝わる伝説のおかげで助かっていた。
水の中でぼうっと考えていると、男が立ち上がり近づいてきた。
「また会いに来るから」と言って水槽に手を当てる。
「ほら、お前も手を当てなさい」
俺も近づいてガラス越しに手を当てた。
俺は一つ分かっている事がある。
それは、この男が何者なのか、ということ。
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