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外出 1
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「ほら早く!」
サシャが笑顔で早く早くと手招きする。
周りは多くの人々が行きかっていて、道に並んだ店からは元気な声が聞こえてくる。
色々な物が売られていて、つい目移りしてしまう。
食べ物やら服に、よく分からない飾りものなど、初めて見たものばかりだ。
それになにやらいい匂いもしてきた。
しかし、視界が悪い。
出掛ける直前、ルーシャにこれを巻いていけ、と目まで隠れてしまうように、ぐるりと長い布を頭から被せられた。
余った端は首のまわりへ巻いている。
なかなか邪魔だ。
「こら、ふらふらしてたらはぐれちゃうよ?」
「あ、すまない。いい匂いがして……」
サシャに肩をぽんぽんと叩かれて、はっとする。
ここではぐれたらまた会える自信が無い。
こんなに人が多いとは思わなかった。
「いつもこんなに人が多いのか?」
「うん、大体いつもこんな感じかな。このあたりは賑わってるからね」
いつもこんなに人が……?
これだけいると流石に少し怖い。
サシャに人の少ない所へ行こう、と声を掛けようとした時、不意に手を握られた。
驚いてサシャを見るとにっこりと微笑まれる。
「一緒に行きたい所があるからはぐれないようにちゃんと握っててね?」
そのまま引っ張られるようにしてサシャの後を付いていく。
何故こうなったのか。
繋がれた手を見ながら、今朝の出来事を振り返る。
朝起きて、しばらくぼーっと窓から外を見ていると、「おはよー!」と元気な声と共にサシャがやってきたのだ。
朝から爽やかだ。
「サシャ様?! こんなに早くからどうされたのですか?」
ルーシャが隣の部屋から驚いたように顔を出した。
どうやら掃除をしていたようで、手に汚れた布を持っている。
「あ、ごめんね。サーナから伝言を頼まれたんだ。 それで早く伝えたくて……」
伝言?
一体何だろうか。
ルーシャに目をやり、一緒に何だろうかと首を傾げた。
先を促すようにサシャに目をやると、なにやらそわそわしたように首飾りを手で弄りながら、窓の外を見る。
サシャの首飾りは銀色の丸い形で、少し厚みがある。
たまに大事そうに握りしめているのを見たことがあった。
長くつけていたのか少しくすんだ銀色がきらりと光る。
その様子を眺めているとサシャが口を開いた。
「今日人魚さんと一緒に出かけてこいって」
「え、今日ですか……?」
ルーシャが何度か目を瞬かせて聞く。
ずいぶん急なことだな。
「歩けるようになってからしばらく経つから、一度町に出てみるようにって」
「私もお供してよろしいですか?」
「ルーシャには話があるからここで待ってて欲しいって言ってたよ」
「……話……? ではお二人で出掛けるのですか?」
少し眉をひそめてルーシャが聞けば、「うん、心配しなくても僕がちゃんと側に付いてるから」と、きっぱりとした口調で言った。
それから、心なしかムッとした顔のルーシャを残して家から出た。
余程俺が迷惑をかけると思っているのか、何度もサシャ様に迷惑をかけないように、と念を押された。
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