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黒い海の中で 桜side
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ずっと…黒い海の中にいた。
光も、音も…何も無い世界で…ただ、俺はそこにいて。
「………………」
誰かを、待っている気がした。
「……あれ、誰を待っているんだっけ…?」
『おれの、だいじなひと』
「そうだ…大事な人ーーー…那雪が…待ってる…」
自分を呼ぶ優しい声を、とろけるような甘い笑顔を思い出す。
早く、あの人の所に帰らないと。
『でも、おれがいたらまた、みんながきずつく。
ねぇおれ…みんながきずついても、あのひとのそばにいたいの?』
「ーーー…ッ…!!」
自分と同じように恥辱された白羽さん…
何も関係ないのに、傷つけられた俺の大事な友達の葉佑と紅佑。
ーーー…俺はまた…あの日を繰り返すのか…?
『おれは、あのひとのおやをころしたひとの、むすこなのに。
まだおれは…しあわせをのぞむの…?』
那雪の両親を殺したのは、俺の実の母親で、
俺には人殺しの血が流れているのに。
「…ッ……ただ、俺は那雪の側にいたくて…それだけで…」
こんな俺を愛してくれた、奇跡のような人。
那雪の側にいたい…ずっとずっと…愛して欲しいから。
『ばかだね、おれは…
あのひとが、まだおれをあいしていると…そう、おもっているの?』
「……ッ…!!それは…」
グサリと突き刺さる言葉。
もし、目覚めた時…隣に那雪が居なかったら…
汚れた俺を、蔑んだ冷たい瞳で見られたら…
きっと俺は、耐えられない。
『どうせめざめても、つらいだけ…ッ…!!
だったら…ずっとめざめなければいいんだ…ずっと、めざめなければいい』
そうだ…那雪とのあの幸せな日々の、夢に浸かれるように。
目を、覚まさなければ良いんだ。なのに…
なのに、こんなにも心が痛いのは何でだろう…?
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