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伝えたいコトバ 桜side
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「ごめん、桜…もう触れないから」
俺が腕を払いのけた時、那雪は傷ついた表情をしていた。
このままじゃ那雪が行ってしまうと思ったから、腕を伸ばした。
でも、俺の腕は届かなくて。
「ーーーッ…!!」
叫びたいのに…行かないでと。
伝えたいのに…この想いを。
なのに、どうして。
「…ッ……、…ッ…」
胸が苦しい。
「桜君!?落ち着きなさい…ッ…ゆっくり呼吸して、ね…」
視界がまたグラグラする。
アキが慌てて介抱してくれて、何とか落ち着きを取り戻した俺に、
アキは一冊のノートとペンを渡してくれた。
「これで会話しよう。いいかな、桜君?」
コクリ…と頷いた。
「…じゃ、質問だけど。那雪が君に触れた時、いきなり手を振り払ったのは何で?」
ーーー…那雪の手が、俺に触れた時…手が…黒くなって、
崩れ落ちるように見えたんだ。
震える手で、ペンを走らせる。
ーーー…俺は、汚れているから。
ーーー…汚い俺が、幸せなんて望んじゃ駄目だから…
俺は皆を不幸にしかしないから、駄目なんだ。望んじゃいけない…
『ソウダ…オマエガシアワセニナルナンテユルサナイ』
黒い声は、俺の身体に染み込んで…俺を黒く染めていく。
「桜君」
アキが俺の事を抱き締める。
ふわり、と優しい香りがして、震える俺から力が抜けていく。
「お前は汚くなんて無い。だから、那雪を求めたって全然良いんだ…
言葉にしなくたって伝える事は出来る。だから、逃げないで」
もし、那雪との未来を求めても良いのなら…俺は。
一文字だけノートに描いて、アキに渡してと頼んだ。
*****
どれぐらい待っていたんだろう。
夕暮れの空を眺めているとドアがバタンッ…と音を立てて開き、俺は振り返った。
夕暮れの色を纏って、俺に向かって微笑む那雪がそこにいて。
「…桜…俺逃げないから、話をしよう…」
あの時アキに渡したーーー…“いかないで”という願いは叶って。
ぎゅっ…と抱きしめた腕が黒くなっていくのにも構わず、那雪は俺を離さない。
「……ッ…」
そして那雪は話始めた。
母さん…アネモネと、那雪の話を。
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