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伝わるコトバ 桜side
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「………ここだよ」
那雪に案内されてたどり着いたのは、屋敷から少し離れた…小高い丘で、
綺麗にされた土地にポツリと、小さな墓石があった。
「ここに眠ってんだ…アネ…いや、桜の母さんが…」
そっと俺を車椅子から下ろし、寄り添いながら歩く。
身体に添えられた手が、微かに震えていて、俺はその手に自分の手を添える。
『オマエハ、シアワセニナンテナレナイ』
遠くで、黒い声が聞こえる。
「…アネ。………ずっと来れなかったけど、やっと伝えられる…
俺、桜が好きだ。幸せにしたいんだよ…愛してるから。
だから、見守っていてくれ」
凛とした声が響いた瞬間、黒い声が消えた。
そして…言葉の意味を理解した瞬間、涙が溢れた。
(ねぇ、母さん…俺、幸せになって良い?
……誰かが…那雪や皆が傷付いても、幸せを望んで良いかな…?
俺は…傷付ける事しか出来ないから、幸せになっちゃ…いけないのに。
それでも、那雪と共に幸せになれるなら…
俺は、幸せを望んで良い…?)
『えぇ…良いのよ、幸せになって。
幸せは、誰もが手に入れられる権利なんだから。』
墓石に触れた瞬間、母さんの声が聞こえた気がした。
母さんの声が聞こえたその時…黒い何かがサラサラと消えていくような、
そんな感覚がした。
それが消えて無くなった瞬間、
ずっと俺の幸せを許せなかったのは…父さんの形をした、俺の罪悪感だったんだと、
そう、思った。
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